【結論】運営基準第16条は、一定の事由がある利用者について「指定居宅介護支援事業者が市町村へ通知する」ことを定めたルール
居宅介護支援の運営基準第16条は、利用者について一定の事由が認められた場合に、指定居宅介護支援事業者が、遅滞なく、意見を付して市町村へ通知しなければならないことを定めています。
通知が必要となるのは、主に次の2つの場合です。
- 正当な理由なしに介護給付等対象サービスの利用に関する指示に従わないこと等により、要介護状態の程度を増進させたと認められるとき
- 偽りその他不正の行為によって保険給付の支給を受け、または受けようとしたとき
この規定は、介護保険法に基づく保険給付の適正化を図るためのものです。
なお、条文上の通知義務を負うのは、ケアマネ個人ではなく「指定居宅介護支援事業者」です。実務では、ケアマネジャーが利用者の状況を把握し、事実関係を整理したうえで、事業所として市町村への通知を検討することになります。
居宅介護支援の運営基準第16条「利用者に関する市町村への通知」とは
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第16条は、利用者に関して一定の事由が生じた場合に、市町村へ通知することを定めています。
条文では、次のように規定されています。
一 正当な理由なしに介護給付等対象サービスの利用に関する指示に従わないこと等により、要介護状態の程度を増進させたと認められるとき。
二 偽りその他不正の行為によって保険給付の支給を受け、又は受けようとしたとき。
このような事由を把握した場合、指定居宅介護支援事業者は、遅滞なく、意見を付してその旨を市町村に通知しなければならないとされています。
つまり第16条は、すべての利用者について市町村へ報告するという規定ではありません。
条文に定められた一定の事由に該当すると認められる場合に、市町村へ通知するためのルールです。
運営基準第16条で通知が必要となる2つのケース
居宅介護支援 運営基準第16条の通知ケース①|正当な理由なくサービス利用に関する指示に従わず、要介護状態を悪化させたと認められるとき
第16条第1号では、
正当な理由なしに介護給付等対象サービスの利用に関する指示に従わないこと等により、要介護状態の程度を増進させたと認められるとき
を通知の対象としています。
ここでは、単に「サービスを利用しなかった」という事実だけで、第16条に該当すると判断することはできません。
条文上は、
①正当な理由なしに指示に従わないこと等がある
→ ②そのことによって要介護状態の程度を増進させたと認められる
という点が重要です。
「正当な理由なし」という点に注意
第16条では「正当な理由なしに」と規定されています。
そのため、利用者がサービスを利用しなかったという事実だけで、直ちに通知が必要になるわけではありません。
利用者の心身の状況や、その時点での具体的な事情などを確認し、正当な理由の有無を含めて個別に判断する必要があります。
例えば、
- 体調の急変
- 入院などの事情
- その他、サービスを利用できなかった具体的な事情
などがある場合には、その事実関係を確認することが重要です。
ただし、これらが必ず「正当な理由」に該当するという意味ではありません。
個々の事情を確認して判断することがポイントです。
「要介護状態の程度を増進させたと認められること」も重要
もう一つ重要なのが、
要介護状態の程度を増進させたと認められるとき
という部分です。
したがって、
「サービスを利用しなかった」=「第16条に該当する」
ではありません。
サービス利用に関する指示に従わなかったこと等と、要介護状態の程度が増進したこととの関係について、事実関係を確認する必要があります。
居宅介護支援 運営基準第16条の通知ケース②|偽りや不正の行為によって保険給付を受けた、または受けようとしたとき
第16条第2号では、
偽りその他不正の行為によって保険給付の支給を受け、又は受けようとしたとき
を通知の対象としています。
ここでは、偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた場合だけでなく、受けようとした場合も対象となっている点に注意が必要です。
例えば、実際の利用状況と異なる内容によって保険給付を受けようとするなど、介護保険の保険給付に関して不正な行為が疑われる場合には、事実関係を確認する必要があります。
ただし、ケアマネジャーが独自に「不正」と断定するのではなく、
- 実際のサービス利用状況
- サービス事業所の記録
- 利用者から確認した内容
- 家族等から得た情報
- ケアマネジャーが把握している事実
などを整理し、事実に基づいて判断することが重要です。
運営基準第16条の目的|介護保険の保険給付を適正に行うための仕組み
運営基準第16条は、保険給付の適正化の観点から、市町村に通知しなければならない事由を定めた規定です。
介護保険法には、不正に受けた保険給付の徴収や、一定の場合に保険給付を行わないことができる仕組みがあります。
そのため、指定居宅介護支援事業者が第16条に該当する事由を把握した場合、市町村へ情報を通知することで、市町村が必要な確認や介護保険法に基づく対応を行えるようにしています。
運営基準第16条と介護保険法第22条の関係
介護保険法第22条第1項では、偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた場合などについて、市町村がその者からその給付の価額の全部または一部を徴収することができる仕組みが定められています。
つまり、
不正な保険給付を受ける
↓
市町村が事実関係を確認
↓
介護保険法第22条に基づく徴収等を行うことがある
という関係です。
第16条は、このような介護保険の適正な運営に関係する事由について、指定居宅介護支援事業者から市町村へ通知することを定めています。
運営基準第16条と介護保険法第64条の関係
介護保険法第64条には、一定の事情がある場合に、市町村が保険給付の全部または一部を行わないことができる仕組みが定められています。
例えば、
- 自己の故意の犯罪行為
- 重大な過失
- 正当な理由なしに介護給付等対象サービスの利用等に関する指示に従わないこと
などによって、要介護状態等を生じさせたり、その程度を増進させたりした場合が対象となります。
ここで注意したいのは、第22条と第64条は同じ制度ではないということです。
介護保険法第22条
主に、偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた場合などの不正利得の徴収に関する規定です。
介護保険法第64条
一定の事情によって、保険給付を行わないことができる場合を定めた規定です。
したがって、運営基準第16条を理解するときは、
第16条=市町村への通知
第22条=不正利得の徴収
第64条=一定の場合の保険給付の制限
という関係で整理すると分かりやすくなります。
ケアマネ視点で見る運営基準第16条の実務ポイント
① まずは事実関係を確認する
第16条に該当する可能性がある事案を把握した場合、まず重要なのは事実関係を整理することです。
例えば、
- いつ、どのようなことがあったのか
- 利用者はどのように説明しているのか
- サービス事業所はどのように把握しているのか
- 実際のサービス利用状況はどうなっているのか
- ケアマネジャーの記録と矛盾していないか
などを確認します。
「不正ではないか」「指示に従っていないのではないか」と感じた段階で、すぐに事実と評価を混同しないことが重要です。
② 利用者の事情も確認する
第16条第1号には「正当な理由なしに」という要件があります。
そのため、利用者がサービスを利用しなかった場合などには、
なぜ利用しなかったのか
を確認することが大切です。
利用者の体調や生活上の事情など、具体的な背景を確認したうえで、事実関係を整理します。
③ 要介護状態の程度との関係を確認する
第16条第1号では、
要介護状態の程度を増進させたと認められるとき
とされています。
そのため、
「サービスを利用しなかった」という事実だけではなく、それによって要介護状態の程度を増進させたと認められるか
という点が重要です。
ケアマネジャーとしては、経過記録やサービス事業所からの報告などを整理し、事実関係を明確にしておくことが大切です。
④ 不正を断定する前に事実を整理する
第16条第2号では「偽りその他不正の行為」が対象となります。
しかし、ケアマネジャーが単独で不正の有無を最終的に判断するという規定ではありません。
「不正ではないか」と考えられる事情を把握した場合には、まず客観的な事実を整理し、事業所内で確認したうえで、市町村への通知が必要な事案かを検討します。
⑤ 通知が必要と判断した場合は「遅滞なく」対応する
第16条では、
遅滞なく、意見を付してその旨を市町村に通知しなければならない
とされています。
つまり、通知が必要な事由に該当すると判断したにもかかわらず、不必要に対応を先延ばしにすることは適切ではありません。
一方で、事実関係をまったく確認せずに通知するという意味でもありません。
必要な事実確認を行い、事業所として通知が必要と判断した場合には、遅滞なく市町村へ通知する
という考え方で対応することが重要です。
「ケアマネ個人の義務」ではなく「指定居宅介護支援事業者の義務」
ここは実務上、特に覚えておきたいポイントです。
運営基準第16条で、
市町村に通知しなければならない
とされているのは、指定居宅介護支援事業者です。
したがって、
「第16条だからケアマネ個人が市町村へ通知する義務がある」
と単純に理解するのは正確ではありません。
実際の業務では、担当ケアマネジャーが利用者の状況を把握することが多いため、ケアマネジャーが事実関係を整理し、管理者など事業所内で確認したうえで、市町村への通知につなげることが考えられます。
事業所として、誰がどのように市町村へ通知するのかをあらかじめ確認しておくと、実際に該当事案が発生したときにも対応しやすくなります。
運営基準第16条でケアマネが注意したいこと
第16条を実務で考えるときは、次の4点を押さえておくと分かりやすくなります。
① サービスを利用しなかっただけで、第16条に該当するわけではない
第16条第1号では、
- 正当な理由なしに指示に従わないこと等
- そのことによって要介護状態の程度を増進させたと認められること
がポイントです。
単純なサービス拒否や欠席だけで、第16条に該当すると決めつけないことが重要です。
② 「正当な理由」の有無を確認する
利用者がサービスを利用しなかった場合には、その背景や事情を確認します。
③ 「不正」と感じた場合も、まず事実を整理する
利用者やサービス事業所を一方的に「不正」と判断するのではなく、客観的な記録や関係者からの情報を確認します。
④ 通知義務を負う主体は指定居宅介護支援事業者
ケアマネ個人の義務としてだけ捉えず、事業所として対応することが重要です。
まとめ|運営基準第16条は「一定の事由があれば、市町村へ通知する」ルール
居宅介護支援の運営基準第16条は、利用者について一定の事由がある場合に、指定居宅介護支援事業者が遅滞なく、意見を付して市町村へ通知することを定めています。
通知の対象となるのは、主に次の2つです。
- 正当な理由なしに介護給付等対象サービスの利用に関する指示に従わないこと等により、要介護状態の程度を増進させたと認められる場合
- 偽りその他不正の行為によって保険給付の支給を受け、または受けようとした場合
ケアマネジャーとして大切なのは、利用者のサービス利用状況だけを見て判断するのではなく、「正当な理由があるのか」「要介護状態の程度との関係はどうなのか」「不正な行為があるのか」など、具体的な事実関係を整理することです。
そして、第16条の通知義務を負うのはケアマネ個人ではなく、指定居宅介護支援事業者であることも押さえておきましょう。
第16条は、ケアマネが利用者を監視するための規定ではありません。
介護保険法に基づく保険給付を適正に行うため、一定の事由を市町村につなぐためのルール
と理解すると、実務でも整理しやすくなります。
参考条文
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第16条「利用者に関する市町村への通知」
- 介護保険法 第22条第1項「不正利得の徴収等」
- 介護保険法 第64条「保険給付の制限」
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(解釈通知)
※本記事では、制度の趣旨を分かりやすくするために説明を加えています。個別の事案について第16条に該当するかどうかは、具体的な事実関係を確認したうえで、市町村等への確認が必要です。


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