【結論】管理者の責務は「事業所を一元的に管理し、基準を守るために指揮命令すること」
居宅介護支援の運営基準第17条では、指定居宅介護支援事業所の管理者に対して、主に次の役割を求めています。
- 介護支援専門員その他の従業者を管理する
- 指定居宅介護支援の利用申込みに関する調整を行う
- 業務の実施状況を把握する
- その他の管理を一元的に行う
- 職員に指定基準を守らせるため、必要な指揮命令を行う
つまり、管理者は自分ですべての仕事を行う人ではありません。
事業所全体の業務が適切に行われているかを把握し、必要な調整や指示を行う立場です。
また、厚生労働省の解釈通知では、管理者について、利用者本位の居宅介護支援を提供するために、業務の適正な執行状況を把握することに加え、従業者の資質向上、健康管理、ワーク・ライフ・バランスの取れた働きやすい職場環境を醸成することも重要とされています。
運営基準第17条「管理者の責務」とは?
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第17条は、「管理者の責務」を定めた規定です。
第17条では、管理者について次のように定めています。
指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員その他の従業者の管理、指定居宅介護支援の利用の申込みに係る調整、業務の実施状況の把握その他の管理を一元的に行わなければならない。
さらに第2項では、
介護支援専門員その他の従業者にこの章の規定を遵守させるため必要な指揮命令を行うものとする。
とされています。
この2つを簡単に整理すると、
第1項=事業所を一元的に管理する
第2項=職員が基準を守るよう必要な指揮命令を行う
ということです。
管理者の「一元的な管理」とは?
第17条で特に重要なのが、
「その他の管理を一元的に行わなければならない」
という部分です。
「一元的に管理する」とは、管理者が事業所の業務をバラバラに見るのではなく、事業所全体の状況を把握し、必要な調整を行うことと考えると分かりやすいでしょう。
具体的には、次のような業務が関係します。
- 職員の業務状況の把握
- 利用申込みに関する調整
- 居宅介護支援の業務が適切に行われているかの確認
- 指定基準が守られているかの確認
- 必要に応じた職員への指示や助言
管理者がすべての業務を自分で行うという意味ではありません。
職員に適切に業務を行ってもらい、その状況を管理者が把握することが重要です。
管理者の責務①|介護支援専門員その他の従業者を管理する
第17条では、管理者に介護支援専門員その他の従業者の管理を求めています。
例えば、事業所内で、
- 誰がどの業務を担当しているのか
- 業務が適切に進んでいるのか
- 職員が困っていることはないか
- 指定基準に沿って業務が行われているか
などを把握することが重要になります。
管理者は、単に職員の勤務状況を確認するだけではありません。
居宅介護支援事業所として適切な業務が行われているかを管理する立場です。
管理者の責務②|利用申込みに関する調整
第17条では、管理者が、
指定居宅介護支援の利用の申込みに係る調整
を行うことも定めています。
新しい利用申込みがあった場合には、事業所として適切に受け入れられるよう調整する必要があります。
例えば、
- 利用申込みを受け付ける体制
- 担当する介護支援専門員の調整
- 利用申込みに関する事業所内の情報共有
- 必要な場合の関係機関との調整
などが考えられます。
また、厚生労働省の解釈通知では、管理者は事業所の営業時間中、利用者からの利用申込み等に対応できる体制を整えておく必要があるとされています。
管理者が介護支援専門員を兼務している場合など、管理者が事業所を離れることがあっても、利用者が適切に管理者へ連絡できる体制を整えておくことが重要です。
管理者の責務③|業務の実施状況を把握する
第17条では、
業務の実施状況の把握
も管理者の責務とされています。
これは、ケアマネジャーが担当している業務について、事業所として適切に実施されているかを管理者が把握することです。
例えば、
- 居宅介護支援の業務が適切に進んでいるか
- 必要な記録が作成されているか
- 運営基準に沿った対応が行われているか
- 利用者への支援に問題が生じていないか
- 苦情などが発生した場合に適切に対応しているか
などを確認することが考えられます。
ここで大切なのは、管理者がすべてのケアマネの仕事を細かく監視するという意味ではないことです。
管理者として、事業所全体の業務が適切に実施されているかを把握し、問題があれば必要な対応を行うことが重要です。
管理者の責務④|指定基準を守るために指揮命令を行う
第17条第2項では、管理者に、
この章の規定を遵守させるため必要な指揮命令
を行うことを求めています。
ここは、管理者の責務を理解するうえで非常に重要です。
管理者は、職員に対して単に「仕事をしてください」と指示するだけではありません。
指定居宅介護支援の基準を守って業務を行うために、必要な指示を出す立場です。
例えば、
- 基準に沿った業務方法を職員に周知する
- 制度改正などによる変更点を職員に伝える
- 基準に反するおそれのある業務があれば改善を求める
- 必要に応じて職員へ助言や指示を行う
- 事業所として統一した対応が必要な場合に方針を示す
といった対応が考えられます。
管理者の「指揮命令」は職員を叱るためだけではない
「指揮命令」という言葉から、管理者が職員に一方的に指示を出すことをイメージするかもしれません。
しかし、第17条の目的は、単に職員を管理することではありません。
厚生労働省の解釈通知では、管理者は、介護保険法の基本理念を踏まえた利用者本位の指定居宅介護支援を提供するために、業務を一元的に管理し、必要な指揮命令を行うことが必要とされています。
そのため、実務では、
- ケアマネが判断に迷ったときに相談できる体制をつくる
- 事業所として統一した対応が必要な場合に方針を示す
- 困難な事例について必要な助言を行う
- 基準違反につながる可能性がある場合に改善を促す
なども、管理者の重要な役割になります。
管理者の責務と「利用者本位」の居宅介護支援
管理者の責務を理解するときには、利用者本位の居宅介護支援を実現するための管理であるという点も重要です。
厚生労働省の解釈通知では、管理者について、介護保険法の基本理念を踏まえた利用者本位の指定居宅介護支援を提供するために、管理や調整、業務の実施状況の把握、指揮命令を行う必要があるとされています。
つまり、
管理者が事業所を管理する
↓
職員が指定基準を守って業務を行う
↓
利用者本位の居宅介護支援につながる
という関係で考えると分かりやすいでしょう。
管理者には「職員の資質向上」も重要
厚生労働省の解釈通知では、管理者について、日頃から業務が適正に執行されているかを把握するとともに、従業者の資質向上についても重要であるとされています。
そのため、管理者として、
- 研修の機会を確保する
- 制度改正などの情報を共有する
- 必要な知識や技術を学べる環境を整える
- ケアマネ同士で事例を共有できる機会をつくる
など、職員の専門性を高めるための環境づくりも大切です。
なお、介護支援専門員の研修機会の確保については、運営基準第19条第3項にも明確な規定があります。
したがって、職員の資質向上は第17条だけでなく、第19条など複数の規定との関係で考える必要があります。
管理者には健康管理や働きやすい職場環境づくりも求められる
厚生労働省の解釈通知では、管理者について、
- 従業者の健康管理
- ワーク・ライフ・バランスの取れた働きやすい職場環境の醸成
も重要とされています。
これは、第17条の条文に「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が直接書かれているという意味ではありません。
第17条の管理者の責務について、厚生労働省が解釈通知で示している管理者の重要な役割として理解するとよいでしょう。
実務では、
- 職員の業務量を把握する
- 勤務状況を確認する
- 休暇を取得しやすい環境を整える
- 心身の負担について相談しやすい職場にする
- 問題が大きくなる前に管理者へ相談できる体制をつくる
などが考えられます。
管理者が職員の働き方や健康状態を把握することは、結果として利用者への支援の質を守ることにもつながります。
管理者の資格要件と第17条の責務は分けて考える
ここはケアマネが特に混同しやすいポイントです。
管理者になれる人の要件と、管理者になった人が何をするのかは別の規定で定められています。
第3条=管理者の配置・要件
現在の基準では、指定居宅介護支援事業所には常勤の管理者を置く必要があり、原則として主任介護支援専門員でなければなりません。
ただし、主任介護支援専門員の確保が著しく困難である等のやむを得ない理由がある場合には、主任介護支援専門員ではない介護支援専門員を管理者とすることができます。
また、現在は管理者要件について経過措置が設けられており、令和9年3月31日までの間、一定の場合に主任介護支援専門員ではない介護支援専門員を管理者とすることができる扱いがあります。
第17条=管理者の責務
一方、第17条は、
管理者になった人が、事業所をどのように管理するのか
を定めています。
つまり、
第3条=管理者の配置・要件
第17条=管理者になった後の責務
と整理すると分かりやすいでしょう。
「管理者だからすべての仕事をする」わけではない
第17条を読んで、
管理者がケアマネの業務をすべて確認しなければならないの?
と感じるかもしれません。
しかし、第17条の趣旨は、管理者がすべての実務を自分で行うことではありません。
管理者は、
職員が適切に業務を行えるように事業所全体を管理する立場
です。
そのため、
- 適切に業務を分担する
- 必要な情報を共有する
- 業務の実施状況を把握する
- 問題があれば必要な対応を行う
- 基準を守るために必要な指示を出す
という管理が重要になります。
ケアマネジャーから見た「管理者の責務」
ケアマネジャーとして働いている場合、管理者の責務は自分の仕事にも直接関係します。
例えば、
業務上の判断に迷ったとき
管理者に相談し、事業所としての考え方や対応を確認する。
制度改正があったとき
管理者から変更点について説明を受け、事業所全体で対応方法を共有する。
基準違反が心配なとき
管理者に相談し、事業所として必要な改善を検討する。
困難なケースを担当したとき
必要に応じて管理者に相談し、事業所として支援方法を検討する。
このように考えると、管理者は単なる「上司」ではなく、事業所が適切に運営されるよう全体を管理する役割を担っていることが分かります。
管理者とケアマネで共有しておきたいこと
第17条を実務につなげるためには、管理者とケアマネが次のような事項を共有しておくことが重要です。
- 事業所の運営方針
- 運営規程
- 各種マニュアル
- 指定基準を守るための基本的な考え方
- 苦情や事故が発生した場合の対応方法
- 制度改正への対応方法
- 困難事例が発生した場合の相談方法
- 管理者への報告・相談の方法
特に重要なのは、問題が発生してから管理者に相談するのではなく、日頃から相談できる仕組みをつくっておくことです。
管理者の責務をケアマネ視点で簡単に整理すると
運営基準第17条は、次のように覚えると分かりやすいでしょう。
① 管理する
介護支援専門員その他の従業者を管理する。
② 調整する
利用申込みに関する調整を行う。
③ 把握する
事業所の業務が適切に実施されているかを把握する。
④ 一元管理する
事業所全体の管理を一元的に行う。
⑤ 指揮命令する
職員が指定基準を守るために必要な指示を行う。
そして、厚生労働省の解釈通知では、これらを通じて利用者本位の居宅介護支援を提供するとともに、職員の資質向上、健康管理、働きやすい職場環境づくりにも取り組むことが重要とされています。
まとめ|運営基準第17条は「事業所全体を適切に動かすための管理者の責務」
居宅介護支援の運営基準第17条では、管理者に対して、
- 介護支援専門員その他の従業者を管理する
- 利用申込みに関する調整を行う
- 業務の実施状況を把握する
- その他の管理を一元的に行う
- 職員に指定基準を守らせるため必要な指揮命令を行う
ことを求めています。
簡単に言えば、
「管理者が自分ですべての仕事をする」のではなく、「事業所全体の業務を把握し、適切に運営されるよう管理・調整・指揮する」
ということです。
また、厚生労働省の解釈通知では、利用者本位の居宅介護支援を提供するために、従業者の資質向上、健康管理、ワーク・ライフ・バランスの取れた働きやすい職場環境を醸成することも重要とされています。
ケアマネジャーとしては、
「管理者は何を管理しているのか」
を知っておくことで、自分自身の業務と事業所全体の運営との関係が分かりやすくなります。
運営基準第17条は、管理者だけが理解しておけばよい規定ではありません。
ケアマネと管理者が、事業所として同じ基準を共有するためにも重要な規定です。
参考条文
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第3条「管理者」
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第17条「管理者の責務」
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第19条「勤務体制の確保」
- 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(老企第22号)」
※本記事は、厚生労働省が公表している基準省令・解釈通知をもとに、ケアマネジャー向けに分かりやすく整理したものです。個別の事案については、指定権者等への確認が必要です。

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