結論
行方不明になったからといって、直ちに介護保険の被保険者資格を喪失するわけではありません。
厚生労働省は「介護保険最新情報Vol.1541」で、第一号被保険者が行方不明となった場合について、関係部署と連携し、行方不明が確認され、住民票が消除されたことにより被保険者資格を喪失させる取扱いを示しています。
一方、住民票の消除には時間がかかる可能性があります。そのため、家族の負担などを考慮し、行方不明者の介護保険料を減免して差し支えないとしています。
さらに、後に失踪宣告などによって過去にさかのぼって死亡したとみなされ、資格もさかのぼって喪失した場合には、死亡したとみなされる日の翌日以降の期間について納められた介護保険料は、返還義務が発生する場合があります。
この記事では、ケアマネが家族から相談を受けたときに押さえておきたいポイントを整理します。
介護保険最新情報Vol.1541とは?
2026年9月8日、厚生労働省は「介護保険最新情報Vol.1541」を発出しました。
テーマは、
「行方不明者の被保険者資格の喪失手続及び介護保険料の減免・返還に係る取扱いについて」
です。
今回の通知では、行方不明となった第一号被保険者について、
- 被保険者資格をいつ喪失させるのか
- 行方不明中の介護保険料をどうするのか
- 後から死亡したとみなされた場合、保険料をどう扱うのか
について、厚生労働省の考え方が示されています。
1.行方不明になっただけで介護保険の資格を喪失する?
原則として、行方不明になっただけで直ちに資格を喪失するわけではありません。
介護保険の第一号被保険者は、原則として「市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者」です。
介護保険法では、その市町村の区域内に住所を有しなくなった日の翌日から資格を喪失するとされています。
では、行方不明の場合はどうするのでしょうか。
厚生労働省は、行方不明となった場合について、
関係部署と連携し、行方不明が確認され、住民票が消除されたことにより被保険者資格を喪失させることが考えられる
としています。
ここは注意が必要です。
「介護保険は、必ず住民票が消除されないと資格喪失できない」という一般的なルールを示したものではありません。
あくまで、行方不明者についての取扱いとして、行方不明の確認と住民票の消除を踏まえて資格喪失させるという考え方です。
2.住民票の消除に時間がかかる場合は?
行方不明者の場合、住民票の消除手続が長期に及ぶ可能性があります。
その間も介護保険料が発生し続けると、家族の負担になることがあります。
そこで厚生労働省は、介護保険法第142条に規定する減免の取扱いの中で、行方不明者に係る介護保険料を減免して差し支えないとしています。
つまり、
「住民票が消除されるまで、家族が保険料を払い続けるしかない」
という整理ではありません。
市町村は、行方不明者の状況を踏まえて、保険料の減免について検討することができます。
3.保険料の減免を申請するときに必要なものは?
厚生労働省は、減免の申請にあたって、
- 警察が発行した行方不明者届の受理に係る証明書類
- 公的年金の支給停止が行われていることを証明する書類
などの添付を求めることが考えられるとしています。
ただし、これは全国一律に必ずこの書類が必要という意味ではありません。
実際に何を提出する必要があるかは、保険者である市町村に確認する必要があります。
4.後から「死亡したとみなされた」場合、保険料はどうなる?
ここが今回の通知で特に重要なポイントです。
行方不明になった人について、後に失踪宣告などによって、過去にさかのぼって死亡したとみなされる場合があります。
その結果、住民票の消除によって被保険者資格も過去にさかのぼって喪失した場合、介護保険料についてもさかのぼって整理する必要があります。
厚生労働省は、
死亡したとみなされる日の翌日以降の期間に係る保険料の賦課決定は無効なものと解される
としています。
そのため、その期間について市町村が保険料として受け取った金銭については、返還義務が発生するとしています。
例えば
仮に、
- 死亡したとみなされる日:2024年4月10日
- 資格喪失:2024年4月11日にさかのぼる
という場合、
2024年4月11日以降の期間について納められた介護保険料
は、返還の対象となります。
ただし、ここは、
「行方不明になったら、その翌日から保険料が返還される」
という意味ではありません。
あくまで、
失踪宣告等によって過去にさかのぼって死亡したとみなされ、被保険者資格もさかのぼって喪失した場合
の取扱いです。
5.ケアマネが家族から相談を受けたら?
ケアマネが資格喪失や保険料の減免・返還を判断するわけではありません。
家族から、
「行方不明になった家族の介護保険料はどうなるの?」
「介護保険証はどうすればいい?」
「ずっと保険料を払っているけれど、返してもらえるの?」
などと相談された場合は、まず状況を確認し、市町村の介護保険担当窓口につなぐことが基本です。
特に確認したいのは、
- 行方不明になったこと
- 警察への届出の状況
- 住民票の取扱い
- 介護保険料の納付状況
- 失踪宣告などの手続きの有無
などです。
ケアマネが「資格喪失になります」「保険料は返還されます」と判断するのではなく、保険者である市町村に確認してもらうことが大切です。
6.年金や住民票の手続きも関係する
今回の通知では、介護保険だけでなく、住民基本台帳や公的年金に関する情報も関係しています。
ただし、介護保険と年金、住民票はそれぞれ別の制度です。
そのため、
「行方不明届を出せば、すべての手続きが自動的に処理される」
と考えないことが大切です。
必要に応じて、それぞれの担当窓口に確認しましょう。
ケアマネが押さえておきたい3つのポイント
① 行方不明=すぐに介護保険資格喪失ではない
行方不明者については、関係部署と連携し、行方不明が確認され、住民票が消除されたことにより資格を喪失させる取扱いが示されています。
② 行方不明中の保険料は減免できる場合がある
住民票の消除に時間がかかる可能性があるため、家族の負担を考慮して、介護保険料を減免して差し支えないとされています。
③ 後から死亡したとみなされた場合は、保険料の返還が発生することがある
失踪宣告等によって過去にさかのぼって死亡したとみなされ、資格もさかのぼって喪失した場合、死亡したとみなされる日の翌日以降の期間について納められた介護保険料は、返還義務の対象となります。
まとめ
今回の「介護保険最新情報Vol.1541」で、ケアマネが押さえておきたいのは次の点です。
- 行方不明になっただけで、直ちに介護保険資格を喪失するわけではない
- 行方不明者については、関係部署と連携し、行方不明が確認され、住民票が消除されたことにより資格を喪失させる取扱いが示されている
- 住民票の消除に時間がかかる場合、行方不明者の介護保険料を減免して差し支えない
- 減免申請では、行方不明者届の受理に係る証明書類などの添付を求めることが考えられる
- 失踪宣告等によって過去にさかのぼって死亡したとみなされ、資格もさかのぼって喪失した場合、死亡したとみなされる日の翌日以降の期間について納められた保険料には返還義務が発生する
家族から相談を受けた場合は、ケアマネが制度上の判断をするのではなく、市町村の介護保険担当窓口につなぐことが基本です。
参考資料
厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1541
行方不明者の被保険者資格の喪失手続及び介護保険料の減免・返還に係る取扱いについて」
※この記事は厚生労働省の通知をわかりやすく整理したものです。 実際の判断や運用を行うときは、必ず厚生労働省が公表している正式な文章(通知・PDF)を確認してください。

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