結論
居宅介護支援事業所では、感染症や災害が発生しても、利用者への支援をできるだけ継続できるようにBCP(業務継続計画)を整備することが義務付けられています。
第19条の2で求められているポイントは、大きく3つです。
- 感染症・災害に備えたBCPを作成する
- BCPをケアマネジャーなどの従業者に周知し、定期的に研修・訓練を行う
- BCPを定期的に見直し、必要に応じて変更する
現在は経過措置が終了しており、居宅介護支援事業所にも義務として適用されています。さらに、居宅介護支援の業務継続計画未策定減算は令和7年4月から適用されています。
つまり、BCPは「作って保管しておけば終わり」ではありません。
作成 → 周知 → 研修・訓練 → 見直し
まで行うことが重要です。
そもそもBCPとは?
BCPとは、Business Continuity Plan(業務継続計画)のことです。
簡単にいうと、
感染症や災害が発生しても、利用者への支援をできるだけ止めないための計画
です。
居宅介護支援事業所の場合、施設や通所サービスとは違い、ケアマネジャーが利用者宅を訪問したり、サービス事業所や医療機関などと連絡を取ったりすることが中心です。
そのため、
- ケアマネジャーが出勤できない
- 事務所が使えない
- 電話やインターネットが使えない
- 災害で利用者の安否確認が必要になる
- 感染症が発生して訪問や面談の方法を変更する必要がある
といった状況でも、どうやって居宅介護支援を継続するのかをあらかじめ決めておくことがBCPの目的です。
第19条の2で何が義務付けられている?
指定居宅介護支援の運営基準第19条の2では、次の3つが定められています。
① 業務継続計画を作成する
感染症や非常災害が発生した場合でも、利用者への居宅介護支援を継続できるよう、業務継続計画を作成します。
また、非常時の体制から早期に業務を再開するための計画も含まれます。
② 研修・訓練を定期的に行う
BCPを作成するだけでは不十分です。
ケアマネジャーなどの従業者にBCPを周知し、必要な研修と訓練を定期的に実施することが求められています。
厚生労働省は、研修・訓練について、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましいとしています。
③ BCPを定期的に見直す
BCPは一度作成したら終わりではありません。
事業所の体制や連絡先、地域の状況などが変わった場合には、必要に応じて内容を変更します。
BCPはいつから義務になった?
BCPの義務化は、いきなり始まったわけではありません。
令和3年度の制度改正で義務化されましたが、3年間の経過措置が設けられていました。
そのため、
令和6年3月31日まで
は経過措置により努力義務とされていました。
そして、
令和6年4月1日から、本格的に義務化
されています。
現在は令和8年ですので、居宅介護支援事業所もBCPの作成・研修・訓練・見直しが必要です。
BCPを作っていないとどうなる?
ここは現在の居宅介護支援事業所にとって重要なポイントです。
居宅介護支援の業務継続計画未策定減算は、令和7年4月から適用されています。
厚生労働省の資料では、第19条の2第1項の基準を満たさない状態が生じた場合、原則としてその翌月から、基準を満たす状態になるまで減算するとされています。
したがって、現在は、
「まだBCPを作っていない」では済まない状態
と考えておく必要があります。
ただし、重要なのはBCPの「有無」だけではありません。
BCPに基づく研修・訓練を行い、定期的に見直しているかも確認しておきましょう。
BCPには何を書けばいい?
厚生労働省の解釈通知では、BCPについて感染症と災害、それぞれの内容を示しています。
感染症に関するBCP
感染症については、主に次のような内容です。
平時からの備え
- 体制の構築・整備
- 感染症を防止するための取り組み
- 必要な備蓄品の確保
初動対応
感染症が発生したときに、誰が何をするのかを決めておきます。
感染拡大防止体制の確立
- 保健所との連携
- 関係者との情報共有
- 必要な対応を行うための体制
などを整理します。
災害に関するBCP
災害については、厚生労働省の資料で、
- 平常時の対応
- 緊急時の対応
- 他施設や地域との連携
などが示されています。
例えば居宅介護支援事業所では、次のようなことを自分たちの事業所に合わせて考えておくとよいでしょう。
平常時
- 事務所の安全対策
- 電気・水道・通信などが止まった場合の対応
- 必要な備品・物資の確保
- 緊急連絡先の整理
緊急時
- BCPを発動する基準
- 管理者やケアマネジャーの役割
- 利用者の安否確認
- サービス事業所や医療機関との連絡
- ケアマネジャーが出勤できない場合の対応
- 事務所が使用できない場合の業務方法
などです。
特に居宅介護支援では、
「担当ケアマネが動けなくなった場合、誰が利用者を担当するのか」
という視点も重要です。
BCPは、一般的な災害対策を書くだけではなく、自分たちの居宅介護支援事業所が実際に業務を続けられる内容になっているかを考えることが大切です。
感染症と災害のBCPは一つにまとめてもいい?
はい。
厚生労働省の解釈通知では、感染症のBCPと災害のBCPを一体的に策定することを妨げないとされています。
つまり、
- 感染症BCP
- 災害BCP
を必ず別々のファイルにする必要はありません。
それぞれ必要な内容が入っていれば、事業所の実情に合わせて一体的に作成することができます。
また、感染症に関するBCPと、感染症の予防・まん延防止のための指針についても、それぞれに必要な項目を適切に設定していれば、一体的に策定して差し支えないとされています。
そのため、事業所としては「何冊の書類を作るか」よりも、
必要な内容がきちんと整備され、実際に使える状態になっているか
を確認することが重要です。
BCPの研修・訓練はどうすればいい?
第19条の2では、BCPについて必要な研修及び訓練を定期的に実施することが求められています。
ここで注意したいのは、居宅介護支援の第19条の2が「年1回以上」と具体的な回数を規定しているわけではないことです。
したがって、記事では、
「年1回以上が法律上必須」
という書き方は避けたほうが安全です。
事業所としては、定期的に研修・訓練を行い、実施したことが分かる記録を残しておきましょう。
厚生労働省も、BCPの内容を職員間で共有し、平常時の対応や緊急時の対応について理解を深める研修を行うことを示しています。
研修・訓練で確認したいこと
居宅介護支援事業所なら、例えば次のような内容が考えられます。
感染症
- 感染症が発生した場合の連絡方法
- 訪問や面談が難しくなった場合の対応
- 関係機関への連絡方法
- 利用者への支援を継続する方法
- BCPの発動方法
災害
- 地震や水害などが発生した場合の対応
- 職員の安否確認
- 利用者の安否確認
- サービス事業所との連絡方法
- 事務所が使用できない場合の対応
- 通信手段が使えない場合の対応
- 担当ケアマネジャーが対応できない場合の代替体制
特に訓練では、実際に連絡先へ電話する、連絡網を使う、安否確認の方法を確認するなど、BCPを実際に動かしてみることが重要です。
厚生労働省もBCP作成支援として、机上訓練などの資料・動画を公開しています。
BCPと感染症対策の関係
居宅介護支援では、BCPだけでなく、感染症の予防・まん延防止についても別の基準があります。
運営基準第21条の2では、
- 感染症対策を検討する委員会
- 感染症の予防・まん延防止のための指針
- 研修・訓練
などが求められています。
そのため、事業所では、
「BCP」だけ確認すればいい
というわけではありません。
BCP、感染症対策、研修・訓練などがそれぞれ必要な内容を満たしているかを確認することが大切です。
ただし、先ほど説明したように、厚生労働省は必要な項目を適切に設定したうえで、感染症BCPと感染症対策の指針を一体的に作成することを認めています。
ケアマネジャーが確認しておきたいBCPチェックリスト
運営指導などを意識する場合は、次の項目を確認しておくとよいでしょう。
BCP本体
□ 感染症に関するBCPがある
□ 災害に関するBCPがある
□ 事業所の実情に合った内容になっている
□ 緊急時の体制・役割分担が決まっている
□ 緊急連絡先が整理されている
□ 利用者への支援を継続する方法が決まっている
研修・訓練
□ BCPを従業者に周知している
□ BCPに関する研修を実施している
□ BCPに関する訓練を実施している
□ 研修・訓練の実施記録を残している
□ できるだけ全ての従業者が参加できるようにしている
見直し
□ BCPを定期的に見直している
□ 職員の変更を反映している
□ 緊急連絡先を確認している
□ 事業所の体制変更を反映している
□ 訓練で分かった問題点をBCPに反映している
BCPは「作成したら終わり」ではない
BCPで最も重要なのは、実際に緊急時に使えるかどうかです。
例えば、BCPに「管理者へ連絡する」と書いてあっても、
- 管理者の電話番号が変わっている
- 職員が連絡方法を知らない
- 誰が利用者の安否確認をするのか決まっていない
- 担当ケアマネが休んだ場合の代替者が決まっていない
という状態では、実際の災害時には役に立ちません。
そのため、
BCPを作る
↓
職員に周知する
↓
研修・訓練を行う
↓
問題点を見つける
↓
BCPを見直す
という流れを作っておくことが大切です。
まとめ|居宅介護支援のBCPで押さえるポイント
居宅介護支援事業所のBCPについて、最低限押さえておきたいのは次のとおりです。
① 感染症・災害のBCPを作成する
第19条の2では、感染症や非常災害が発生しても居宅介護支援を継続できるよう、業務継続計画を作成することが求められています。
② BCPを職員に周知する
BCPを作成するだけではなく、ケアマネジャーなどの従業者に内容を周知します。
③ 研修・訓練を定期的に行う
BCPに基づいた研修・訓練を定期的に行い、実際に緊急時に動けるようにしておきます。
④ BCPを定期的に見直す
職員や連絡先、事業所の体制などが変われば、BCPも見直します。
⑤ 未策定減算にも注意する
居宅介護支援の業務継続計画未策定減算は、令和7年4月から適用されています。
厚生労働省のBCP資料を活用する
厚生労働省では、介護事業所向けにBCPのガイドラインやひな形、研修動画などを公開しています。
特に、BCPをこれから作成する事業所は、厚生労働省の資料を参考にすると整理しやすくなります。
厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料・動画」
根拠となる主な資料
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(解釈通知)
- 業務継続計画未策定減算に関する厚生労働省資料
- 厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料・動画」
特に第19条の2では、BCPの作成だけでなく、周知・研修・訓練・定期的な見直しまでが求められていることを押さえておきましょう。
※この記事は厚生労働省の通知をわかりやすく整理したものです。 実際の判断や運用を行うときは、必ず厚生労働省が公表している正式な文章(通知・PDF)を確認してください。

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