有料老人ホームの登録制導入に向けた準備が進められています。
今回の制度改正では、入居者の安全確保やサービスの質の向上に加え、介護サービスや医療機関を自由に選べる環境づくりが重視されています。
特に、住宅型有料老人ホームなどで課題となっている、いわゆる「囲い込み」への対応は、ケアマネジャーにとっても重要なポイントです。
この記事では、厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第10回)」の資料をもとに、制度改正の背景と主な変更点を整理します。
なお、以下は2026年10月9日に公表された検討会資料に基づく解説です。登録基準などの具体的な内容については、今後の政省令等で変更される可能性があります。
この記事のポイント
- 有料老人ホームの一部を対象とする登録制の導入が予定されている
- 登録対象案では、認知症の状態や医療ニーズに関する条件が示されている
- 利用者の選択を妨げる契約条件やサービスの囲い込みへの対策が盛り込まれている
- ケアマネジメントの独立性を確保するための仕組みが検討されている
- 施設の運営体制や提供サービスなど、入居者が判断するための情報公開が進められる
- 2027年12月の施行に向けて準備が進められている
有料老人ホームの登録制とは
現在、有料老人ホームは老人福祉法に基づく届出制度のもとで運営されています。
今回の制度改正では、一定の要件に該当する有料老人ホームを対象とした登録制の導入が予定されています。
厚生労働省の検討会資料では、一定の要介護者を入居対象とするホームなどが登録制の対象として示されています。
具体的には、認知症の日常生活自立度Ⅲ以上の要介護者や、一定の医療ニーズを有する要介護者を入居対象とするホームが挙げられています。
ただし、対象となるホームの具体的な範囲については、今後の政省令や解釈通知等で明確化される予定です。
したがって、すべての有料老人ホームが一律に登録制へ移行すると理解するのではなく、登録対象となる施設の範囲を確認することが重要です。
登録制の対象となるホームの条件
厚生労働省の第10回検討会資料では、登録制の対象となるホームについて、主に次の2つの条件案が示されています。
① 認知症の状態に関する条件
要介護者であって、認知症高齢者の日常生活自立度が「Ⅲ以上」の人を入居対象とするホームです。
認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲは、認知症による症状や行動、意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする状態を指します。
Ⅲだけでなく、ⅣやMも「Ⅲ以上」に含まれます。
② 医療ニーズに関する条件
要介護者であって、一定の医療ニーズを有する人を入居対象とするホームです。
検討会資料では、医療ニーズの判断に関係するものとして、「特掲診療料の施設基準等」の別表第7・第8に掲げる人が想定されています。
別表第7には、末期の悪性腫瘍や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、対象となる疾病等が定められています。
別表第8には、在宅酸素療法や在宅人工呼吸、気管カニューレ、留置カテーテルなど、医療処置や管理に関係する状態等が定められています。
別表第7・第8は医療保険制度上の区分であり、個々の疾病名や医療処置だけで登録対象になると判断するのではなく、告示の具体的な条件を確認する必要があります。
詳しくは、こちらの記事で解説しています。
登録対象は入居者の人数だけで判断できるのか
登録対象案では、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の要介護者などを「入居対象とするホーム」という考え方が示されています。
そのため、現在の入居者40人のうち、該当する人が何人いるかという人数だけで、登録対象かどうかを判断することはできません。
例えば、次のように考える必要があります。
- 該当する入居者が1人いる場合: その事実だけで、登録対象になると断定することはできません。
- 該当する入居者が0人の場合: 現在該当する人がいないという理由だけで、対象外とは断定できません。
介護保険最新情報の19ページには、「現存する有料老人ホームの大半が対象となることを想定」と書いてありますので、多くの施設が該当することとなると思われる。
確認したいのは、該当する要介護者を入居対象としているかどうかです。入居対象者の条件や実際の運営状況を踏まえ、今後公表される政省令や通知等で具体的な判断基準を確認する必要があります。
施設の管理者や運営法人は、入居契約書、入居案内、入居判定の基準などを確認し、正式な制度内容が公表された段階で対象となるかどうかを判断することが大切です。
なぜ有料老人ホームの登録制が必要なのか
有料老人ホームの運営状況を把握しやすくするため
有料老人ホームでは、提供するサービスや職員体制、入居契約の内容などが施設によって異なります。
入居希望者や家族が、施設ごとの違いを十分に理解したうえで選択できるようにすることが重要です。
今回の制度改正では、登録申請や情報公表の仕組みを整備し、施設の運営状況や提供サービスを把握しやすくすることが検討されています。
介護サービスの囲い込みを防ぐため
今回の見直しで重要なテーマの一つが、介護サービスの囲い込みへの対策です。
例えば、次のような取扱いが問題となります。
- 特定の介護サービス事業所の利用を契約条件とする
- 担当ケアマネジャーやかかりつけ医の変更を強要する
- 特定の介護サービス事業所を利用する場合に家賃の軽減などの優遇措置を設ける
厚生労働省の登録基準案では、入居希望者による自由なサービス選択を確保するため、こうした不当な条件を付さないことが示されています。
ただし、地域の事情などにより特定の事業所の利用が事実上不可欠となる場合については、資料上も例外的な考え方が示されています。
有料老人ホームの登録制で何が変わるのか
利用者が介護サービスや医療機関を選びやすくなる
登録基準案では、ホームの設置者や関連事業者など、特定の事業者からのサービス提供に限定・誘導しないことや、入居者が希望するサービスの利用・選択を妨げないことが示されています。
利用者本人の希望や状況を踏まえ、必要なサービスを選べる環境を整えることが重要になります。
ケアマネジャーは、施設側の説明だけで判断するのではなく、利用者本人の希望を確認し、選択肢を整理することが求められます。
施設の情報公開が進められる
登録申請では、施設の名称、入居対象者、ホームで提供する介護等の内容、提携する介護サービス事業者に関する情報などの提出が検討されています。
また、登録システムを活用した情報公表の仕組みも整備される予定です。
これにより、入居希望者や家族が、施設の体制やサービス内容を理解したうえで判断しやすくなることが期待されています。
安全確保やサービスの質に関する基準が示される
登録基準案では、入居者の尊厳や安全を守り、サービスの質を確保するための項目も示されています。
主な項目は次のとおりです。
- 虐待防止、身体拘束等の適正化
- 事故発生時の対応
- 災害・感染症を想定した業務継続計画(BCP)
- 個人情報の取扱い、衛生管理
- 協力医療機関の確保
- 職員の研修や人員体制の確保
これらは検討会資料に示された登録基準案であり、具体的な規定内容は今後の政省令等で確認する必要があります。
ケアマネジャーに求められる対応
施設の説明だけでなく、客観的な情報も確認する
有料老人ホームへの入居を検討する際には、施設のパンフレットや説明だけでなく、重要事項説明書や公表情報なども確認することが大切です。
特に、ホームが提供するサービスと、外部の介護サービス事業所が提供するサービスの違いを把握しておくと、利用者への説明に役立ちます。
利用者の意思決定を支援する
利用者や家族から、次のような相談を受けることも考えられます。
- この施設に入居すると、併設事業所を利用しなければならないのか
- 担当ケアマネジャーを変更する必要があるのか
- 別の医療機関や介護サービス事業所を選べるのか
ケアマネジャーは、契約内容や利用者の状況を確認しながら、本人が納得して選択できるよう支援することが重要です。
ケアマネジメントの独立性を守る
検討会資料では、入居契約とケアマネジメント契約の独立性や、ケアマネジャーの独立性を担保するための措置が示されています。
具体的には、契約やケアプラン作成に関する手順書・ガイドラインの策定、施設長・管理者への研修、相談担当者の設置などが挙げられています。
また、近隣の介護サービス事業所について情報提供することも、登録基準案に盛り込まれています。
利用者の希望を確認し、特定の事業者への誘導を避けながら、必要なサービスを選べるよう支援することが大切です。
有料老人ホームの登録制はいつから始まるのか
2026年6月25日に「社会福祉法等の一部を改正する法律」が公布されています。
厚生労働省の第10回検討会資料では、新たな登録制の施行を2027年12月、既存の有料老人ホームの移行に関する経過措置期間の終了を2028年12月とする予定が示されています。
ただし、これは検討会資料に示された予定です。実際の施行日や具体的な手続きについては、政省令等の公表内容を確認する必要があります。
ケアマネジャーとしては、今後の制度の具体化に注目しながら、利用者の選択権やケアマネジメントの独立性を守る視点を持っておくとよいでしょう。
まとめ|有料老人ホームの登録制は利用者の選択と安全を守るための制度改正
有料老人ホームの登録制は、一定の要件に該当するホームを対象に、サービスの質や運営の透明性を確保するために導入が予定されている制度です。
特に押さえておきたいポイントは、次の4点です。
- 登録制の対象となるホームの範囲を確認する
- 特定の介護サービス事業所への誘導など、囲い込み対策を理解する
- 利用者本人の選択と意思決定を支援する
- ケアマネジメントの独立性を守る
登録基準の具体的な内容は、今後の政省令や通知等で確認する必要があります。
制度改正の動向を継続的に確認しながら、利用者本位のケアマネジメントにつなげていきましょう。
引用・参考資料
厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第10回)の資料について」

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