結論
令和9年度に向けて検討されている「登録施設介護支援」の創設は、住宅型有料老人ホームで長年課題となっていた「囲い込み」や「ケアマネジメントの独立性の欠如」を是正するための大きな制度改正です。
これまで住宅型有料老人ホームでは、併設の訪問介護やデイサービスの利用が事実上前提となっているケースも多く、利用者本位のケアマネジメントが難しい場面がありました。
新制度では、
- 住宅型有料老人ホームを登録制へ移行
- 特定サービス利用の強要を禁止
- ケアマネの独立性を制度的に担保
- 利用者のサービス選択権を確保
- 地域とのつながりを重視した支援へ転換
が図られます。
一方で、居宅介護支援事業所のケアマネジャーには、新たな役割や事務負担が生じる可能性もあります。
要点整理
- 住宅型有料老人ホームは「住まい」であるが、実態は中重度者の生活の場となっている
- 囲い込みや過剰サービスが全国的な課題となっている
- 住宅型有料老人ホームは届出制から登録制へ移行予定
- 新たに「登録施設介護支援」が創設される方向
- 特定の訪問介護・デイサービス利用を入居条件にすることは禁止方向
- ケアマネの独立性が制度上明確化される
- 利用者の地域参加支援が新たな役割になる
- 居宅介護支援事業所は当面みなし指定が想定されている
- 利用者には原則1割負担が導入される方向
そもそもなぜ住宅型有料老人ホームの制度見直しが必要なのか
住宅型有料老人ホームの入居者はすでに重度化している
厚生労働省資料では、住宅型有料老人ホームの入居者は、
- 要介護3以上:約56%
- 医療処置あり:約12%
- 死亡退去率:約55%
とされており、介護付き有料老人ホームと大きく変わらない状況になっています。
つまり、制度上は「住まい」でありながら、実態としては中重度者の生活の場になっています。
制度と実態の乖離が大きくなっていた
しかし住宅型有料老人ホームは、
- 届出制
- 人員基準なし
- 運営基準が限定的
- 自治体による把握が困難
という状況でした。
その結果、利用者保護や適切なサービス提供の面で課題が指摘されていました。
住宅型有料老人ホームで問題となっていた「囲い込み」とは
特定サービスの利用が事実上前提になっているケース
現場では、
「入居するなら併設ヘルパーを利用してください」
「デイサービスは系列事業所を使ってください」
といったケースが少なくありません。
もちろん全ての事業所ではありませんが、厚生労働省も全国的な課題として認識しています。
ケアマネジャーが利用者本位の支援をしにくい状況
このような状況では、
- ケアプランが事業所都合になりやすい
- 利用者の選択権が制限される
- サービスの過剰提供につながる
- ケアマネの独立性が損なわれる
といった問題が生じます。
登録施設介護支援とは何か
新たな相談支援類型が創設される
新制度では、住宅型有料老人ホーム入居者向けに、
「登録施設介護支援」
という新たなケアマネジメント類型が創設される方向です。
主な役割は、
- ケアプラン作成
- サービス調整
- 地域生活相談
- 地域活動参加支援
- 生活状況の継続的把握
となります。
地域とのつながりを重視する制度へ
これまで住宅型有料老人ホームでは、生活が施設内で完結しやすいという課題がありました。
新制度では、
- 地域行事への参加
- 住民との交流
- 社会参加の継続
など、地域共生社会を意識した支援が求められるようになります。
住宅型有料老人ホームはどう変わるのか
届出制から登録制へ
新制度では、中重度者を対象とする住宅型有料老人ホームについて、
届出制 → 登録制
へ移行する方向です。
これにより、
- 運営基準
- 人員基準
- 利用者保護規定
が整備され、自治体による指導監督も強化されます。
特定事業所利用の強要は禁止方向
今回の制度見直しの最大のポイントです。
入居条件として、
- 併設訪問介護利用
- 系列デイサービス利用
などを求めることは認められない方向となっています。
利用者自身が必要なサービスを選択できる環境整備が進められます。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーへの影響
メリット① 利用者本位のケアマネジメントがしやすくなる
これまでホーム側との関係で悩んでいたケアマネも多いと思います。
制度上、
- ケアマネの独立性確保
- サービス選択の自由
が明確になることで、利用者本位の支援がしやすくなります。
メリット② 地域資源を活用しやすくなる
施設内完結型ではなく、
- 地域サロン
- 通いの場
- 地域行事
- ボランティア活動
などを活用した支援がしやすくなる可能性があります。
デメリット① 事務負担が増える可能性
登録施設介護支援では、
- 契約事務
- 利用者負担管理
- 請求業務
- 地域生活相談記録
など、新たな業務が発生する可能性があります。
デメリット② 地域参加支援の難しさ
重度者や医療依存度の高い利用者の場合、
「地域参加」といっても実際には容易ではありません。
今後は、
- オンライン交流
- 施設内地域交流
- 個別支援
など柔軟な運用が求められるでしょう。
現在住宅型有料老人ホームを担当しているケアマネはどうなる?
現時点では、
既存の居宅介護支援事業所については当面みなし指定
とされる方向です。
そのため、
- すぐに指定を取り直す必要はない
- 現在の利用者支援は継続可能
と考えられています。
ただし、今後詳細な運営基準や報酬体系が示されるため、継続的な情報収集が必要です。
ケアマネ視点で考える今回の制度改正の本質
今回の制度改正の本質は、「住宅型有料老人ホームを施設に近づけること」
ではありません。
本質は、「利用者本位のケアマネジメントを取り戻すこと」
にあります。
住宅型有料老人ホームに入居していても、
- 必要なサービスを自由に選べる
- 地域とのつながりを維持できる
- ケアマネが中立的に支援できる
そのような仕組みへ転換していくことが目的と言えるでしょう。
もっと詳しい 内容はこちら
住宅型有料老人ホームの登録施設介護支援でケアマネの仕事はどう変わる?現場への影響をわかりやすく解説
まとめ
これまで
- 囲い込みが生じやすい
- ケアマネの独立性が弱い
- 地域とのつながりが希薄
- 自治体が実態把握しにくい
これから
- 登録制へ移行
- 登録施設介護支援を創設
- サービス選択の自由を確保
- ケアマネの独立性を担保
- 地域参加支援を強化
今後の詳細な制度設計次第ではありますが、住宅型有料老人ホームを担当する居宅ケアマネジャーにとっては、非常に大きな転換点になる可能性があります。
引用・参考資料
- 厚生労働省「令和8年全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(有料老人ホーム制度の見直し)」
厚生労働省資料① - 厚生労働省「令和8年全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(登録施設介護支援)」
厚生労働省資料② - 厚生労働省「有料老人ホーム制度の見直しに関する資料」
厚生労働省資料③
※本記事は令和8年7月時点の検討資料を基に作成しています。今後の社会保障審議会・介護給付費分科会等の議論により制度内容が変更される可能性があります。
【注意】本記事について
本記事は、厚生労働省が公表している令和8年全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料等をもとに、現時点で公表されている内容を整理したものです。
登録施設介護支援や住宅型有料老人ホームの登録制については、今後の社会保障審議会や法改正の議論により、制度内容・報酬・人員基準・運営方法などが変更される可能性があります。
そのため、本記事の内容は現時点での検討状況をわかりやすくまとめたものであり、最終決定事項ではありません。
今後、厚生労働省から示される通知・Q&A・法令改正情報を必ず確認してください。


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