介護支援専門員等の在宅介護従事者の安全確保とは(結論)
この通知が一番伝えたいことは、
「在宅で働く介護支援専門員や訪問系職員を、一人で危険にさらさないために、事業所と地域全体で安全対策を徹底してほしい」
というメッセージです。
要点まとめ
- 埼玉県川口市で、ケアマネが利用者宅で殺害される事件が発生したことが背景にある。
- 危険なケースを、職員一人の判断や自己責任に任せず、“組織として”安全対策を整えることが求められている。
- 利用者や家族からの暴言・暴力・過度な要求などの「カスタマーハラスメント」への対策が、法律で事業主の義務になる。
- 国は研修や相談窓口、同行訪問の費用などを支援する仕組みを用意している。
- 都道府県・市町村は、この内容を居宅介護支援事業所等に周知し、地域の関係機関と連携して安全確保に取り組むことが求められている。
介護保険最新情報Vol.1508の概要
この通知は、厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課から、
都道府県・市町村の介護保険担当課あてに出された「事務連絡」です。
内容は主に次の2つです。
- 1.介護サービス事業者による安全確保
- 2.対策実施のための国による支援
あわせて、一般社団法人日本介護支援専門員協会の声明文が公表されていることも紹介されています。
埼玉県川口市の事件と今回の通知の背景
通知の冒頭では、次のような事実が示されています。
- 埼玉県川口市で、介護支援専門員が利用者宅で危害を加えられ、死亡する事件が発生した。
- 事件の詳細は警察が捜査中で、すべてが明らかになっているわけではない。
- しかし、このような事件を二度と起こさないために、在宅で働く介護支援専門員等の安全確保が非常に重要であると強く示されている。
この背景を踏まえ、
「危険なケースに対して、事業所・地域・国がどう動くべきか」を整理したのが今回の通知です。
介護サービス事業者に求められる安全確保のポイント
事業所としての体制づくり
通知では、次のような点が強調されています。
- 深刻なトラブルになるおそれがある事案への対応は、個々の職員任せにしないこと。
- 「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」などの解釈通知で、事業者が講ずるべき望ましい措置が示されていること。
- 令和7年法律第63号により、カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が、すべての事業主に義務付けられたこと(令和8年10月施行)。
ここから読み取れるのは、
「危険なケースに対して、事業所としてのルール・マニュアル・体制を整えておくことが必須になっている」ということです。
地域との連携と情報共有
通知では、次のような連携が重要とされています。
- 地域ケア会議での情報共有
- 医師など他職種との連携
- 保険者、地域包括支援センター、保健所、地域の事業者団体、法律の専門家、警察などへの相談・連携
つまり、
「一つの事業所だけで抱え込まず、地域全体で危険なケースに向き合う体制を作っておくこと」が求められています。
ハラスメント対策マニュアルの活用
通知では、厚生労働省が作成した次の資料が紹介されています。
- 「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」
- 管理者・職員向け研修用の手引き
- 介護現場におけるハラスメント事例集
これらは、
利用者や家族からの暴言・暴力・過度な要求などにどう対応するかを学ぶための資料です。
令和7年法律第63号で何が変わるのか
令和7年法律第63号についてはこちら
カスタマーハラスメントとは
ここでいう「カスタマーハラスメント」とは、
利用者や家族などからの、行き過ぎた言動や行動のことです。
例えば、次のようなものが含まれます。
- 大声で怒鳴る、人格を否定するような暴言を繰り返す。
- 何度説明しても納得せず、長時間にわたって電話や訪問で責め続ける。
- 職員に対して不必要に身体的接触を求める、または暴力をふるう。
- 契約内容を超えた要求を、強い口調で何度も迫る。
こうした行為は、
職員の心身を追い詰め、場合によっては命の危険にもつながるため、法律として対策が求められるようになりました。
令和7年法律第63号のポイント(やさしい言い方)
令和7年法律第63号では、
「働く人を守るために、事業主がやらなければならないこと」を強化する改正が行われました。
その中の一つが、
「カスタマーハラスメントから職員を守るための対策を、事業主が必ず行うこと」です。
ここで大事なのは次の点です。
- 対象は「すべての事業主」であり、介護事業所も含まれる。
- 施行は令和8年10月からで、その時点までに体制を整えておく必要がある。
事業主に義務付けられること(具体的な中身)
法律で求められる「雇用管理上の措置」は、わかりやすく言うと次のようなものです。
- 事業所としての方針を決めること
- 「暴力や暴言などの行為は許されない」という考え方を、事業所として明確にする。
- 就業規則やマニュアルに書き込む。
- 職員が相談できる窓口を用意すること
- 管理者や本部など、相談先をはっきりさせる。
- 必要に応じて、外部の専門家(社労士・弁護士など)につなげる。
- トラブルが起きたときの対応手順を決めておくこと
- 単独訪問を避ける基準を決める。
- 同行訪問に切り替える判断の目安を作る。
- 警察や地域包括支援センター、保険者などに連絡する流れを決めておく。
- 記録の残し方を統一する。
- 職員への研修を行うこと
- 危険なサインに気づけるようにする。
- 実際にトラブルが起きたときの対応方法を学ぶ。
- 必要に応じて、利用者・家族にもルールを伝えること
- 契約書や重要事項説明書に、暴力・暴言などがあった場合の対応(サービス中止など)を明記する。
- 安全確保のために、複数名で訪問する場合があることを説明する。
これらは、
「職員を守るために、事業所がやるべきことを、法律としてはっきりさせた」
と理解するとイメージしやすくなります。
介護事業所での具体的なイメージ
令和7年法律第63号と今回の通知を踏まえると、介護事業所では次のような対応が求められます。
危険なケースの見える化
- 「危険度が高い利用者・家族」の情報を、事業所内で共有する。
- 訪問前に、過去のトラブル歴やリスク要因を確認する仕組みを作る。
単独訪問を避ける判断基準
- 暴力・暴言の既往がある場合は、原則として複数名で訪問する。
- 不安を感じるケースでは、ケアマネが一人で抱え込まず、上司や同僚と相談する。
地域との連携ルートの明確化
- 地域包括支援センターや保険者と、危険事案の情報共有を行う。
- 必要に応じて、警察や法律の専門家に相談できるよう、連絡先を整理しておく。
国による支援策と活用の仕方
通知では、国が用意している支援策も示されています。
研修や相談窓口への支援
- 「地域医療介護総合確保基金」を活用して、自治体が行う研修や相談窓口の設置などを支援している。
- これにより、
- 介護従事者向けのハラスメント対策研修
- 相談窓口の整備
などが行いやすくなっています。
同行訪問の費用支援
- 介護支援専門員の安全確保のため、利用者宅に複数名で訪問する場合の経費(同行訪問の人件費など)を支援する仕組みがある。
- これは、
- 令和7年度補正予算(令和8年度に繰り越し)に計上された
- 「地域のケアマネジメント提供体制確保支援事業」
の中の - 「介護支援専門員業務負担軽減支援事業」
で活用できるとされています。
つまり、
「安全のために複数名で訪問したいが、人件費が心配」という事業所に対して、国が財政的な後押しを用意しているということです。
介護支援専門員・事業所が今からできることチェックリスト
最後に、実務で使いやすいように、今から取り組めることを整理します。
- 危険事案のリスクチェックリストを作る・見直す。
- 単独訪問を避ける基準(同行訪問に切り替える条件)を決める。
- ハラスメント対策マニュアルを事業所内で共有し、研修を行う。
- トラブル発生時の報告・相談ルート(上司・本部・包括・保険者・警察など)を明文化する。
- 契約書や重要事項説明書に、安全確保に関する事項(暴力・暴言があった場合の対応など)を追記することを検討する。
- 自治体が実施する研修や支援事業(基金を活用したもの)について情報収集する。
- 同行訪問の費用支援(介護支援専門員業務負担軽減支援事業など)の活用を、自治体に確認する。
引用・参考資料
- 厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課
「介護支援専門員等の在宅介護従事者の安全確保の徹底について」
(介護保険最新情報 Vol.1508) - 厚生労働省
「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」ほか関連資料 - 令和7年法律第63号
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」


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