結論|居宅介護支援事業所にも感染症対策の仕組みが必要
居宅介護支援事業所では、介護支援専門員の健康管理に加えて、感染症の発生やまん延を防ぐための仕組みを整えることが求められています。
特に第21条の2では、次の3つがポイントです。
- 感染対策委員会を、おおむね6か月に1回以上開催する
- 感染症の予防・まん延防止のための指針を整備する
- 感染症対策の研修・訓練を定期的に実施する
さらに、委員会を開催した場合は、その結果を介護支援専門員に周知することも必要です。
ただし、従業者が1名の居宅介護支援事業所については、指針を整備することで、感染対策委員会を開催しないことも差し支えないとされています。
居宅介護支援事業所の従業者の健康管理【第21条】
運営基準第21条では、
「介護支援専門員の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理を行わなければならない」
と定められています。
つまり、事業所として、介護支援専門員の清潔や健康状態について適切に管理することが必要です。
ここで注意したいのは、第21条に「健康診断を年○回行う」「発熱時は勤務を休ませる」などの具体的な方法まで規定されているわけではないということです。
そのため、事業所の状況に応じて、職員が健康に業務を行えるよう必要な管理を行うことが基本となります。
感染症の予防・まん延防止のための措置【第21条の2】
第21条の2では、感染症が発生したり、まん延したりしないよう、事業所として次の措置を講じることが定められています。
3つのポイント
- 感染対策委員会
- 感染症対策指針
- 研修・訓練
この3つを事業所として整備することが、第21条の2の基本です。
感染対策委員会を開催する
おおむね6か月に1回以上
感染対策委員会は、おおむね6か月に1回以上、定期的に開催する必要があります。
また、感染症が流行する時期などを考慮して、必要に応じて随時開催することも必要です。
そして、委員会を開催するだけではありません。
委員会で検討した結果を、介護支援専門員に周知することも必要です。
運営指導でも、
- 委員会の開催状況
- 委員会で検討した結果
- その結果を周知したこと
が確認できるようにしておくことが重要です。
感染対策委員会のメンバー
解釈通知では、感染対策委員会は、
感染対策の知識を有する者を含む、幅広い職種で構成することが望ましい
とされています。
また、感染症対策の知識を有する者については、外部の専門家を含めて積極的に参画を得ることが望ましいとされています。
したがって、
「必ず看護師を入れなければならない」
「必ず主任ケアマネを入れなければならない」
という決まりではありません。
事業所の状況に応じて構成し、感染対策について適切に検討できる体制を整えることが重要です。
感染対策担当者を決めておく
委員会では、構成メンバーの責任や役割分担を明確にするとともに、感染対策を担当する者を決めておくことが必要とされています。
感染対策担当者は、看護師が望ましいとされていますが、他の担当者との兼務も、職務に支障がなければ差し支えありません。
テレビ電話等を使った委員会開催も可能
感染対策委員会は、テレビ電話装置等を活用して開催することもできます。
オンラインで開催する場合は、利用者や職員の個人情報を扱う可能性があるため、個人情報の適切な取扱いや情報セキュリティにも注意が必要です。
厚生労働省は、個人情報保護委員会・厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」や、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守するよう示しています。
他の会議や他事業所との連携も可能
感染対策委員会は、他の会議体を設置している場合、その会議体と一体的に設置・運営することも差し支えないとされています。
また、感染症対策については、他のサービス事業者との連携によって行うことも可能です。
小規模な居宅介護支援事業所では、他の介護サービス事業所と連携して感染症対策を行う方法も検討できます。
従業者が1名の事業所には特例がある
居宅介護支援事業所の従業者が1名の場合は、感染対策委員会を開催せず、感染症の予防・まん延防止のための指針を整備することで差し支えないとされています。
この場合も、指針を作成する際には、外部の感染管理等の専門家と積極的に連携することが望ましいとされています。
感染症の予防・まん延防止のための指針
感染症対策では、事業所として指針を整備することも必要です。
厚生労働省の解釈通知では、指針には大きく、
- 平常時の対策
- 感染症発生時の対応
を定めることとされています。
平常時の対策
例えば、次のような内容が考えられます。
- 事業所内の衛生管理
- 環境の整備
- 手洗いなどの基本的な感染対策
- 標準的な予防策
- ケアに関する感染対策
感染症発生時の対応
発生時には、
- 発生状況の把握
- 感染拡大の防止
- 医療機関との連携
- 保健所との連携
- 市町村の事業所関係課等との連携
- 行政等への報告
- 事業所内の連絡体制
- 関係機関への連絡体制
などを定めることが想定されています。
重要なのは、単に「感染症対策を行う」と書くのではなく、感染症が発生した場合に、事業所としてどのように対応するのかが分かる内容にしておくことです。
具体的な記載内容については、厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き」も参考になります。
感染症対策の研修を行う
第21条の2では、介護支援専門員に対して、感染症の予防・まん延防止のための研修を定期的に行うことが求められています。
解釈通知では、研修について、
- 感染対策の基礎的な知識
- 指針に基づいた衛生管理
- 衛生的なケア
などを内容とすることが示されています。
また、組織的に職員教育を行うため、年1回以上の定期的な教育を開催するとともに、新規採用時にも感染対策研修を実施することが望ましいとされています。
ここで注意したいのは、
「新規採用時の研修」は解釈通知では「望ましい」とされている
という点です。
一方、定期的な研修については、年1回以上の教育を行うことが示されています。
研修記録を残す
研修を行った場合は、
- 実施日
- 参加者
- 研修内容
など、実施したことが確認できる記録を残しておきましょう。
厚生労働省の運営指導における確認文書でも、感染症対策の研修・訓練の実施状況や結果が分かるものが確認文書として示されています。
感染症発生時を想定した訓練を行う
研修だけではなく、**感染症が発生した場合を想定した訓練(シミュレーション)**も必要です。
解釈通知では、訓練を定期的、年1回以上行うことが必要とされています。
訓練では、例えば、
- 感染症が発生した場合の連絡方法
- 事業所内の役割分担
- 指針に沿った対応
- 感染対策を行ったうえでのケア
などを確認します。
訓練は、必ずしも実際の動作を伴う訓練だけに限られません。
机上訓練を含め、実施方法は問わないとされていますが、机上と実地の訓練を適切に組み合わせることが適切とされています。
感染症対策と業務継続計画(BCP)はどう違う?
ここは混同しやすいポイントです。
感染症の予防・まん延防止については、第21条の2の感染症対策として、
- 感染対策委員会
- 感染症対策指針
- 研修・訓練
を整備します。
一方、感染症が発生した場合でも居宅介護支援を継続するための**業務継続計画(BCP)**は、別の規定に基づくものです。
ただし、厚生労働省の解釈通知では、感染症に関するBCPと感染症の予防・まん延防止のための指針について、それぞれに必要な項目を適切に設定していれば、一体的に策定しても差し支えないとされています。
つまり、
「感染症対策の指針」と「感染症BCP」は同じものではないが、内容を整理して一体的に作成することは可能
ということです。
運営指導前に確認しておきたい書類・記録
厚生労働省の運営指導における確認文書では、第21条の2について、次の資料が確認文書として示されています。
感染対策委員会
- □ 感染対策委員会の開催記録
- □ 委員会で検討した内容が分かるもの
- □ 委員会の結果を周知したことが分かるもの
感染症対策指針
- □ 感染症の予防・まん延防止のための指針
- □ 平常時の対策が記載されている
- □ 発生時の対応が記載されている
- □ 事業所内の連絡体制が分かる
- □ 関係機関への連絡体制が分かる
研修・訓練
- □ 感染症対策研修の実施記録
- □ 研修内容が分かる資料
- □ 参加者が分かる記録
- □ 感染症発生時を想定した訓練の実施記録
- □ 訓練の内容・結果が分かる記録
居宅介護支援事業所の感染症対策チェックリスト
運営指導前には、次の項目を確認しておきましょう。
第21条|健康管理
- □ 介護支援専門員の清潔・健康状態を適切に管理している
第21条の2|感染症対策
感染対策委員会
- □ おおむね6か月に1回以上、委員会を開催している
- □ 必要に応じて臨時開催している
- □ 感染対策担当者を決めている
- □ 委員会の結果を介護支援専門員に周知している
- □ 委員会の開催・検討内容を記録している
感染症対策指針
- □ 感染症の予防・まん延防止のための指針がある
- □ 平常時の対策が記載されている
- □ 感染症発生時の対応が記載されている
- □ 事業所内の連絡体制が決まっている
- □ 関係機関への連絡体制が決まっている
研修・訓練
- □ 感染症対策の研修を定期的に実施している
- □ 研修の実施記録がある
- □ 年1回以上の訓練を実施している
- □ 訓練の実施内容・結果を記録している
小規模事業所
- □ 従業者1名の事業所の場合、感染症対策指針を整備している
まとめ|第21条・第21条の2で大切なのは「仕組み」と「記録」
居宅介護支援事業所の感染症対策では、単に消毒や手洗いを行うだけではありません。
第21条では、介護支援専門員の清潔や健康状態について必要な管理を行うことが求められています。
そして第21条の2では、
①感染対策委員会
②感染症対策指針
③研修・訓練
という仕組みを整えることが求められています。
特に運営指導を意識するなら、
「委員会を開催した」
だけで終わらせず、
「何を検討したのか」「結果を職員に周知したか」「研修・訓練を実施したか」
まで記録として確認できるようにしておくことが重要です。厚生労働省の運営指導資料でも、委員会の開催状況・結果、指針、研修・訓練の実施状況・結果が確認文書として示されています。
また、感染症対策の指針と感染症BCPは別のものですが、必要な項目を適切に設定すれば、一体的に作成することも可能です。
「感染症が起きたらどうするか」を事前に決め、職員が実際に動ける状態にしておく。
これが、居宅介護支援事業所における感染症対策の基本です。
参考資料
- 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」
- 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(老企第22号)」
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル・確認項目及び確認文書」
- 厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き」
※この記事は厚生労働省の通知をわかりやすく整理したものです。 実際の判断や運用を行うときは、必ず厚生労働省が公表している正式な文章(通知・PDF)を確認してください。


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