結論:成年後見制度は「ケアマネ+地域包括+市長申立て」で支えるしくみ
- ポイント1: 判断力が弱くなり、お金や契約の管理が難しくなった人を守る制度が「成年後見制度」
- ポイント2: 身寄りがない、家族が遠方などの場合は、地域包括支援センターが中心となり、必要に応じて市長名で家庭裁判所に申立てを行う
- ポイント3: ケアマネは、状態の把握・情報整理・関係機関との連絡役として動く
- ポイント4: 申立て費用は原則、本人のお金から支払うが、一時的に包括が立て替えることもある
- ポイント5: 後見人がつく前に本人が亡くなり、家族が相続放棄すると、立て替えた費用が戻らないリスクがある
- ポイント6: トラブルを減らすには、早めの相談・説明・記録の徹底がとても大事
成年後見制度とは何か(ケアマネ視点での基本)
成年後見制度は、認知症や障害などで判断力が弱くなり、お金の管理や契約が自分だけでは難しい人を守る制度です。 厚生労働省
家庭裁判所が「後見人」などを選び、その人が本人のお金や契約をサポートします。
成年後見制度の対象になる場面
- お金の管理ができない: 通帳・カードの管理ができない、支払いが滞る
- 契約が難しい: 施設入所契約、賃貸契約、重要な書類の内容が理解できない
- トラブルの危険: 悪質商法、詐欺、不要な契約をしてしまう心配がある
身寄りがない・家族が遠方のときの基本的な流れ(成年後見制度)
ここでは、ケアマネジャーが担当している利用者に、身近に動ける家族がいない場合を想定して流れを整理します。
① ケアマネが最初に行うこと(状況の整理)
- 状態の確認:
- 判断力の低下の程度
- お金の管理がどれくらい難しいか
- 家賃・光熱費・施設費などの滞納の有無
- 家族の状況確認:
- 家族がいるかどうか
- 連絡が取れるか
- 遠方か、実務的に動けるか
- 緊急度の確認:
- すぐに支払いが必要なものがあるか
- 生活が止まりそうな危険があるか
② 成年後見制度の説明(利用者・家族向け)
ケアマネは、本人や家族に対して、次のような内容をわかりやすく説明します。
- どんな制度か:
判断力が弱くなった人を、法律的に守るしくみであること - 誰が選ぶか:
家庭裁判所が後見人を選ぶこと - お金のこと:
申立て費用や後見人の報酬は、原則として本人のお金から支払うこと - 家族が動けない場合:
地域包括支援センターや市町村長申立ての仕組みがあること 厚生労働省
③ 地域包括支援センターへの相談・連携
ケアマネは、「これは成年後見制度が必要だ」と判断したら、地域包括支援センターに相談・情報提供します。
- 利用者の状態・生活歴・家族状況
- 金銭管理の問題点
- これまでの支援経過
地域包括支援センターは、市町村の窓口として、市長名での申立てが必要かどうかを検討する立場になります。 厚生労働省
地域包括支援センターと市長申立ての流れ(成年後見制度)
ここでは、身寄りがない、または家族がいても動けない場合に、地域包括支援センターが関わる流れを整理します。
① 市長申立てが検討されるケース
- 身寄りがない、親族が見つからない
- 家族はいるが、
- 遠方で実務ができない
- 関わりを拒否している
- 虐待や搾取の疑いがある
- 本人の状態から、本人自身による申立てが難しい
このような場合、市町村長(市長)の名前で家庭裁判所に申立てを行う「市長申立て」が検討されます。 厚生労働省
② 市長名が必要になる場面と内部の流れ
地域包括支援センターが「市長申立てが必要」と判断した場合、次のような流れになります。
- 包括が市役所内部で協議
- 福祉担当課などと連携し、「市長申立てを行うかどうか」を検討
- 市長名での申立て決定
- 市として「市長名で家庭裁判所に申立てを行う」ことを決裁
- ここで市長の名前(市町村長名)が申立書に記載される
- 申立書類の作成
- 申立書(申立人:市長)
- 本人の状況をまとめた資料
- ケアマネの情報提供書・支援経過
- 家庭裁判所へ提出
- 地域包括支援センターや市役所担当が、家庭裁判所に書類を提出
※市長本人が動くわけではなく、市長名義で、職員や包括担当者が実務を行うイメージです。
※市町村長申立ての考え方や基準は、厚生労働省の通知や実務者協議で整理されています。 厚生労働省
③ 申立てに必要な主な書類
- 申立書(申立人:市長)
- 本人の戸籍・住民票
- 財産に関する資料(通帳コピー、年金額、家賃など)
- 医師の診断書(判断力の状態)
- 支援経過の記録(ケアマネ・包括の記録)
ケアマネは、生活状況や支援経過の情報提供という形で、書類作成に深く関わります。
お金の流れ(成年後見制度の費用と立替え)
成年後見制度を利用するには、いくつかのお金がかかります。
① 申立てにかかる主なお金
- 収入印紙: 約800円
- 郵便切手: 数千円程度
- 診断書料: 5,000〜10,000円ほど
- 鑑定費用: 5〜10万円(家庭裁判所が必要と判断した場合)
これらは、原則として本人のお金から支払うことになります。 厚生労働省
② 後見人の報酬
- 月に1〜3万円程度が多い
- 本人の財産から支払う
- 生活保護など、収入が少ない人には、報酬助成制度を用意している自治体もあります。 厚生労働省
③ 地域包括支援センターが費用を立て替える場合
本人の通帳が使えない、家族も支払えない、という場合、地域包括支援センターや市が一時的に費用を立て替えることがあります。
- 立替えの対象:
- 診断書料
- 収入印紙・切手代
- 必要に応じて鑑定費用など
- 後見人が選ばれた後:
- 後見人が本人の財産を管理
- 本人の財産から、包括や市に立替金を返す
ただし、この「立替え」には、大きなリスクもあります(次の章で説明します)。
本人が亡くなったとき・家族が相続放棄したときのリスク
① 後見人がつく前に亡くなった場合
- 申立ての準備中や、審判待ちの間に本人が亡くなることがあります。
- この場合、後見人は選ばれないまま終了となります。
- すると、
- 本人の財産を管理する人がいない
- 立替えた費用を、本人の財産から返してもらう手続きが難しくなる
② 家族が相続放棄した場合の問題
本人が亡くなったあと、家族が相続放棄をすると、次のようなことが起こります。
- 家族は、
- 財産も借金も引き継がない
- 通帳や財産の管理をしない
- その結果、
- 包括や市が立て替えた費用を、誰からも回収できない
- 家財道具の片づけや住居の明け渡しなどが宙ぶらりんになる
- 行政代執行などで、自治体の負担が増えることもある
③ ケアマネ・包括がトラブルに巻き込まれるパターン
- 「もっと早く後見制度を使うべきだったのではないか」
- 「立替えの説明が足りなかったのではないか」
など、家族から不満やクレームが出ることもあります。
そのため、説明と記録を丁寧に残すことがとても重要です。
トラブルを減らすために大事なポイント(ケアマネ・包括共通)
① 早めに成年後見制度を検討する
- 認知症の初期など、まだ話し合いができるうちから、
- お金の管理
- 将来の契約
について、家族と一緒に考えておくことが大切です。
② 立替えは「最後の手段」として考える
- まずは、
- 本人の預金から支払えないか
- 家族に負担をお願いできないか
を検討します。
- どうしても難しい場合に、包括や市の立替えを検討する、という順番が望ましいです。
③ 説明した内容をしっかり記録に残す
- ケアマネ記録・包括記録に、
- 説明した内容
- 家族の反応
- 立替えや申立てを選んだ理由
を具体的に残しておきます。
- これは、後から「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも重要です。
④ 亡くなったときのことも、事前に少し話題にしておく
- 葬儀の希望
- 家財の片づけを誰がするか
- 相続放棄の可能性があるかどうか
などを、可能な範囲で事前に確認しておくと、いざというときの混乱が少なくなります。
まとめ|成年後見制度とケアマネ・地域包括・市長申立ての関係
成年後見制度は、判断力が弱くなった人の生活と財産を守るための大切なしくみです。
身寄りがない人や、家族が遠方で動けない人の場合、ケアマネジャーと地域包括支援センターが連携し、必要に応じて市長名で家庭裁判所に申立てを行います。
申立て費用や後見人の報酬は、原則として本人のお金から支払われますが、一時的に包括が立て替えることもあります。その一方で、後見人がつく前に本人が亡くなったり、家族が相続放棄をしたりすると、立替えた費用が戻らないリスクもあります。
だからこそ、早めの相談と、丁寧な説明・記録がとても大切です。
引用・参考にした資料
- 厚生労働省「成年後見制度における市町村長申立に関する実務者協議資料」 厚生労働省
- 厚生労働省「成年後見制度における市町村長申立に関する実務者協議の取りまとめ」 厚生労働省
- 厚生労働省「市町村長申立ての適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進について」 厚生労働省
▶ 成年後見制度とは、基礎知識についてはこちら
後見制度とは?ケアマネジャーがここだけは押さえたい基本知識
▶ 成年後見制度利用者への支援についてはこちら
成年後見人がついている利用者への支援はこう動く!ケアマネが迷わない実務ガイド

コメント