高齢者の骨折後のケアプランの作成について
ケアプラン作成のポイント
①高齢者に多い骨折:高齢者の骨折は、転倒に応じて骨折の部位がある程度絞れます。骨折の部位が偏るのも特徴です。
・大腿骨頚部骨折
・圧迫骨折
・橈骨骨折
・上腕骨骨折
この4か所の骨折が多く、退院時の調整からかかわることが多く、病院との在宅調整をすることが多いです。
②住環境:一度転倒骨折されると、再度転倒を繰り返すことが多く、まずはバード面で予防することが重要です。転倒と隣り合わせてリハビリを実施していく必要があり、リスクと隣り合わせになります。実家りとした転倒予防を図る必要があります。
③リハビリ:骨折後には必ずリハビリが介入し、身体機能の低下を予防しましょう。
④再発予防:骨折は、ADLが低下し更なる骨折を起こします。再発予防が肝心となります。
⑤治癒:骨折は、治ります。活動性も改善することも多く、介護サービスに関してもしっかりとした目標を立てて、将来的にプランから除外することも事前に説明をするとサービス事業所にも終了を伝えやすくなります。
ケアプランの着目点
状態や部位 | 予後予測 | ケアプランの視点 |
---|---|---|
主治医との関わり | ・骨折後は、予後は完治していく場合が多い。整形外科の受診は、徐々になくなるが当初は数週間単位で受診となる場合がある。 | ・定期受診の方法の確認 ・総合病院→町の病院 |
住宅環境 骨折後のADL | ・再転倒のリスク大。 ・退院前だとまだ、ADLが目標まで達していないことが多い。リハビリの担当にしっかり「どのぐらいのADLがゴールですか」と尋ねましょう。 | ・自宅環境の確認。退院時やリハビリの担当者と一緒に自宅に訪問して危険個所の確認をしましょう。 ・歩行器・車いすの必要性の確認。リハビリに関しても歩行器や杖の練習がどの程度進んでいるのかを確認しましょう。 |
人工骨頭置換術後の 禁忌肢位(きんきしい) | 人工骨頭置換術の場合、脱臼が生じる可能性があります。 | ・生活動作を確認し、脱臼の危険がないかを確認します。下記の通り危険な動作は、避けましょう。 ①膝をついてベッドへ上る。 ②低い椅子に座る。 ③前屈して靴下をはく。 ④足の爪を切る ⑤股関節をまげて床のものをとる。 ⑥風呂の跨ぎ動作。 |
利き腕 | 利き腕の骨折であれば、しばらくは生活動作に大きな障害となります。確認しておく必要が高いです。 | ・茶碗を洗う動作や歯を磨く動作、物を運ぶなども家訓しておく必要があります。 ・衣類の脱ぎ着も確認しましょう。 |
骨粗しょう症 | ・高齢者は、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。(腰を曲げただけひねっただけなど。) | ・薬の管理。骨粗しょう症の薬は飲み方に注意が必要。確認しましょう。 ・自己注射もあり得る。自己注射の場合は、管理や誰が打つのかを確認。 ・骨粗しょう症の薬は、歯(顎)の骨の状態が悪くなることがあります。歯医者に通う際は、薬の情報は必須です。 |
トイレ | ・環境が整えば、自宅トイレでも可能ですが、夜間帯の移動には、不安定さが増すため再転倒の注意が必要です。 | ・ポータブルトイレ・尿器の必要性を確認。 ・トイレまでの動線に手すりを設置、ライトを設置など。 ・トイレでの立ち座り。 |
外出 | ・玄関や屋外のは段差が多くなりがち。転倒のリスクが高い分、移動に負担がかかる。 | ・段差などに手すりを検討しましょう。 ・受診するには、外出する必要があり、第一に検討を行うべき場所。 |
社会参加 | ・骨折から外出をためらうようになると、そこから閉じこもりとなりがち。 | ・リハビリもかねて、外出の機会を確保する方法を検討する。 |
家事 | ・骨折後、難し事もリハビリを継続していくうちに良くなることも多いです。 | ・リハビリに家事動作の練習を実施。 ・必要に合わせてヘルパーの利用。 |
利用者および家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
(上腕骨骨折)
本人:腰が痛みます。痛みがあるとやる気がでません。掃除ができないし、買い物ができない。
(課題分析の結果)上腕骨骨折から家事動作に痛みがあり、不十分さがある。本人は意欲を失っているが、ADL的には保存的で時間と共に痛みも軽減していく可能性があることを理解されている。今後、骨折後の痛みと付き合いながら、機能向上を図る必要性がある。
(大腿骨頚部骨折)
本人:足が弱って動かないです。手術から痛みも継続しています。一人暮らしですが以前のように家事ができないです。以前のように一人で生活をしていきたいです。
(課題分析の結果)骨折後の下肢の痛みがあり、移動には負担感が強い。筋力の低下も著しく、本人も感じているところであり、下肢筋力の増強が必要である。また、生活機能の低下も著しくQOLの維持を図るためにも家事などの生活の支援及び訓練が必要です。
(手・腕の骨折 認知症)
本人:自分でなんでもできます。これまで通り家事を行うことも問題ないでしょう。また、庭の花木の世話をしたいです。
(課題分析の結果)骨折後の痛みがあるが、理解力が乏しく無理な行動をとりやす状況。家事動作や屋外作業にも意欲的であるが、再骨折には注意が必要であり、支援や見守りが必要である。
総合的な援助の方針
・身体機能の維持向上を図り、本人が自分でできることが増えるように支援を行います。
・心身機能の低下を予防し、日常動作が維持・向上できるように支援を行います。
・住宅環境を整え、転倒なく安全に過ごせるように支援をしていきます。
・脱臼の危険があります。不安のある動作を行わないように環境を整え、またリハビリによる指導を定期的に受けることで、安全に在宅生活を継続できるように支援します。
・住宅型の施設で生活をするようになり、地域になじめずひきこもりとなっている。楽しみのある生活を送れるよう骨折後のリハビリも兼ねて、通所で他者交流を図ることで外出の機会を確保し、生活域の拡大を図っていきます。
・医師や看護師との連携を図り、骨粗しょう症の悪化や骨折の再発予防を図りましょう。また医療管理や在宅療養上でのアドバイス受け、これからも在宅生活が円滑に継続できるように支援します。
・家事動作の自立を図り、今後も住み慣れた地域で地域の方に見守られながら安心して生活が継続できるように支援します。
ニーズ 長期目標 短期目標 サービスの内容
リハビリ
課題 | 長期目標 | 短期目標 | サービスの内容 |
---|---|---|---|
家族のためにできる体力を作りたい | 歩行や移動の安全性を確立させ、耐久性を向上させる | 毎日自己リハビリを行う習慣を作る。 | ・自宅環境下での、洗濯、掃除、調理など自立に向けたリハビリの実施。 ・筋力維持向上のためのリハビリを実施 ・生活環境へのアドバイスを受ける。 ・日常的に行えるリハビリの提案を受け実施する。 ・調理の下ごしらえ(材料の準備等)の作業リハビリ ・掃除や洗濯などの工夫(モップを使う・乾燥機付きの洗濯機を利用するなどの提案を受ける) |
近くの公園に散歩に行き、友人と話をしたい。 | 公園までの移動ができる。 | 下肢筋力の向上する。 | ・筋力向上のための歩行訓練 ・運動を定期的に行い、下肢筋力の維持向上を目指す。 ・運動量を増やし、社会参加ができるよう促していく。 |
痛みなく生活が継続できる | 買い物や受診などにひとりで行ける。 | 転倒しない体つくり | ・歩行訓練 ・関節可動域訓練(ROM) ・平行棒内歩行 ・歩行器(杖)による歩行訓練 ・耐久性向上訓練 ・立位、座位訓練 |
近くの商店に買い物に行きたい | 転倒予防。 | 歩行状態の維持向上を図る。 | ・屋外歩行訓練 ・歩行状態の評価 ・商店までの歩行訓練を実施。屋外移動の安全性の確認。 |
骨粗しょう症
課題 | 長期目標 | 短期目標 | サービスの内容 |
---|---|---|---|
骨折の再発を予防したい | 骨が強くなる。 | ・度な運動を実施する。 ・バランスよく食事を摂取する。 | ・バランスよく食事をとる。 ・適度な運動を行う。 ・栄養指導を受ける。 |
病気の治療をしたい | 骨折しない。 | ・自己注射の自立ができる。 | ・自己注射(テリボン等) ・看護師により医療的な管理を受けつつ、安全に自己注射を実施できる。 ・指導や見守りを受け自己注射が実施できる。 |
転倒予防
課題 | 長期目標 | 短期目標 | サービスの内容 |
---|---|---|---|
転倒しない体つくりをしたい。 | ・転倒を予防できる。 ・楽しみを作りたい。 ・近所の公園で散歩ができる。 | ・環境を整える。 ・歩行状態が安定する。 ・食事はリビングまで歩いて行く。 | ・歩行訓練 ・関節可動域訓練(ROM) ・平行棒内歩行 ・歩行器(杖)による歩行訓練 ・耐久性向上訓練 ・立位、座位訓練 |
過ごしやすい環境で生活がしたい。 | ・転倒をしない。 ・自宅で安心安全に生活を続けることができる。 ・夜間帯の転用を予防できる。 | ・歩行を安定させる。 ・自宅のバリアフリー化をはかる。 ・トイレ動作の自立を図る。 | ・トイレ内の環境を整える(手すりの設置・補高便座) ・ポータブルトイレの活用(夜間帯のトイレ動作の簡素化) ・自宅内の動線に手すりを設置 ・段差の解消(トイレや浴室玄関上がりかまち等) |
大腿骨骨折の特長
課題 | 長期目標 | 短期目標 | サービスの内容 |
---|---|---|---|
手術後の脱臼を防ぎたい | 脱臼や転倒予防が図れる。 | ・入浴時の安全な移乗動作の指導を受けれる。 ・禁忌肢位のについての指導を受けれる。 | ・リハビリによる生活動作の確認や指導を受けれる。 ・低い椅子に腰かけないよう環境を整える。 ・靴下をはく際に自助具を活用する。 |
痛みを緩和し寝たきりを予防したい。 | 転倒予防を図る。 | ・痛みと付き合いながら機能訓練を行う。 ・動きやすい環境を整える | ・日ごろから適度な運動を実施する。 ・バランス能力の向上 ・家事が行えるように歩行器や椅子を準備し、座って作業を行う。 ・定期的にリハビリを実施し、こわばった筋肉をほぐし、痛みなく過ごせる。 |
圧迫骨折
課題 | 長期目標 | 短期目標 | サービスの内容 |
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圧迫骨折の再発を予防したい | 身体に無理なく生活を続ける。 | ・動作を楽に行う。 | ・コルセットの着脱の介助が受けれる。 ・身体を丸めたり捻る動作をしないようにリハビリからの動作指導を受ける。 ・筋力の維持を行う。 |
痛みなく在宅生活を過ごしたい。 | 医療管理を受け再発を予防できる。 | ・痛みなく生活を送れる ・骨粗しょう症の予防を図る。 | ・痛みのコントロールができる。 ・内服管理 ・定期受診 ・コルセットの利用 |
転倒予防を図る | 姿勢よく過ごすことができる。 | 腰に負担なく生活ができる。 | ・特殊寝台の活用。腰に負担がないようにベッドのギャッチ機能を活用して起き上がりを実施。 ・円背が著しく、寝返りが困難なため、床ずれ防止用具の活用。 ・歩行器を活用して姿勢よく歩行を行う。 ・重いものを持つなどの腰の負担になることを避ける。 |
橈骨骨折
課題 | 長期目標 | 短期目標 | サービスの内容 |
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手首の痛みがあり、家事ができない。室内を清潔に保ちたい | ・掃除や洗濯などができる。 | ・生活環境をきれいに保てる。 | ・床拭きや浴室掃除など手首に負担かかる作業を実施 ・トイレ掃除など水回りの細かい掃除の支援を受けれる。 |
以前のように家事を行いたい。 | ・掃除や調理が一人で実施できる。 | ・痛みと付き合いながらリハビリを行う ・転倒の再発予防 | ・定期的なリハビリを実施し、左(右)手での、作業を練習する。 ・転倒予防のために環境を整える。 ・自分で行えるリハビリを実施。 ・専門職からのリハビリメニューの提案や評価を受けれる。 |
痛みなく過ごせる | ・痛みがなくなる。 | ・身体に負担がないように環境を整える。 ・腕(肩)の治療ができる。 | ・エアマットを活用し、寝返り時の痛みを緩和する。 ・定期受診・内服管理 ・運動機能維持および疼痛緩和のためリハビリを実施。 ・可動域訓練、拘縮予防訓練 |
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