中立・公平の原則と「囲い込み」の現実
介護保険制度の中核を担うケアマネジャー(介護支援専門員)。その役割は、利用者の希望や状態に応じて最適なサービスを組み合わせ、ケアプランを作成・調整することです。
しかし現場では、「中立・公平」という原則が、法人の利益や組織の都合によって揺らいでいる現実があります。
■ 中立・公平とは建前なのか?
介護保険法では、ケアマネジャーは「利用者の意思を尊重し、適切なサービスを中立・公平に提供する」ことが求められています。にもかかわらず、実際には多くのケアマネジャーが自法人のサービスを優先的に勧めているケースが少なくありません。
住宅型の施設などでは、入居と同時に併設の居宅介護支援事業所や訪問介護事業所と契約するよう誘導される「囲い込み」構造が問題視されています
■ 囲い込みの何が問題なのか?
- 利用者の選択肢が奪われる
- ケアマネジメントの中立性が形骸化する
- サービスの質が固定化・硬直化する
- 不正請求や過剰サービスの温床になることも
本来、利用者は自分の意思でケアマネジャーやサービス事業者を選ぶ権利があります。しかし、住宅型施設では「うちはこのケアマネしか使えません」と言われ、選択の余地がないまま契約してしまうことも多いのです
■ 利用者と家族に伝えたいこと
ケアマネジャーは、利用者の人生の伴走者であるべき存在です。法人の利益や都合ではなく、「その人らしい暮らし」を支えるために、時には自法人以外のサービスを提案する勇気が必要です。
利用者やご家族の皆さんも、「このケアマネさん、本当に私たちの立場で考えてくれている?」と、一度立ち止まって考えてみてください。ケアマネジャーを変える権利も、サービスを選び直す自由も、皆さんにあります。
■ 最後に──ケアマネジメントの原点に立ち返ろう
ケアマネジャーの専門性とは、法人の営業マンになることではありません。利用者の声に耳を傾け、地域の多様な資源を活かして、最善の選択肢を共に考えること。それが本来の「中立・公平」な支援です。
囲い込みの構造に流されず、利用者本位のケアを貫くケアマネジャーが増えることを、心から願っています。
家族ができる!ケアマネジャーへの上手な尋ね方と囲い込み対策
■ 1. 「他にも選べる事業所はありますか?」と聞いてみる
これはとてもシンプルだけど効果的な質問! ケアマネが特定の事業所ばかりを勧めてくる場合でも、「他に選べるところはありますか?」と聞くことで、選択肢の提示を促せます。
✅ ポイント: 「ここしか使えません」と言われたら要注意!介護保険制度では、利用者にはサービス選択の自由があります
2. 「見学や体験利用はできますか?」と提案する
複数の事業所を比較することは、囲い込みを防ぐ有効な手段です。 「他のデイサービスも見てみたいのですが」と伝えることで、ケアマネの対応を見極めることができます。
✅ ポイント: 見学や体験を嫌がるような対応があれば、囲い込みの可能性を疑ってもいいかも。
3. 「このケアプランはどうやって決めたのですか?」と理由を聞く
ケアプランの内容に納得がいかないときは、「なぜこのサービスを選んだのか」を聞いてみましょう。 根拠が曖昧だったり、「うちの法人だから安心です」といった説明しかない場合は、再検討の余地ありです。
4. 地域包括支援センターに相談する
中立的な立場で相談に乗ってくれるのが地域包括支援センター。 「ケアマネを変えたい」「他の事業所を使いたい」といった相談も受け付けています。
✅ ポイント: ケアマネジャーの変更は利用者の権利として認められています
5. 感情的にならず、冷静に「確認する」スタンスで
ケアマネとの関係を悪化させずに尋ねるには、「疑う」のではなく「確認する」という姿勢が大切です。
たとえば:
- 「念のため、他の選択肢も知っておきたいんです」
- 「本人に合ったサービスを一緒に探したくて」
こんなふうに伝えると、角が立ちにくく、でもしっかり意思を示せます。


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