前回までの議論との変化・これまでの制度との違いを中心に解説
介護保険部会の資料2は、「介護保険制度の持続可能性」をテーマに、
これまで部会で議論されてきた論点を整理・再提示した資料です。
一見すると新しい制度改正案が並んでいるように見えますが、
実際には
- これまでの制度の課題は何か
- 前回までの議論でどこまで方向性が固まりつつあるのか
を読み取ることが重要です。
この記事では、これまでの制度 → 前回までの議論 → 今回(資料2)で見えてきた変化
という流れで整理します。
1️⃣ 介護保険制度の「持続可能性」という考え方の変化
これまでの制度
- 高齢者の生活を支えることを最優先
- 利用者負担は抑制的
- 財政悪化は「将来の課題」として先送りされがち
前回までの部会の議論
- 2040年に向けて
- 給付費の急増
- 現役世代・高齢者双方の負担増
が避けられないことが共有される
今回(資料2)での変化
- 「制度をどう守るか」から「制度をどう続けるか」へ
- 負担の見直しを避けて通れないという認識が、かなり明確に整理
👉 持続可能性は「検討課題」ではなく前提条件になりつつある
2️⃣ 利用者負担(1割・2割・3割)の考え方
これまでの制度
- 原則1割負担
- 一定以上所得者は2割・3割
- 判定は主に「所得」で判断
前回までの議論
- 高所得高齢者の負担が軽すぎるのでは、という問題提起
- 2割・3割負担の対象拡大が継続的に議論
今回(資料2)の整理ポイント
- 所得区分の見直しを本格検討する段階に入った
- 単純な負担増ではなく
- 負担増の上限設定
- 急激な負担変化への配慮
を組み合わせる方向性
👉 「誰に、どこまで負担してもらうか」を具体的に詰める段階
3️⃣ 資産(預貯金など)を負担判断に使うという変化
これまでの制度
- 原則として「所得」で判断
- 資産は補足給付など一部制度のみで考慮
前回までの議論
- 所得が低くても資産が多い人への公平性が課題に
- ただし事務負担の大きさから慎重論も多かった
今回(資料2)での変化
- 資産を負担能力の判断に反映する方向性を明確に整理
- 例として
- 所得では2割負担だが、資産が少ない場合は1割に戻す
といった「調整型」の考え方が示されている
- 所得では2割負担だが、資産が少ない場合は1割に戻す
👉 所得一本から「所得+資産」へ
4️⃣ ケアマネジメント(居宅介護支援)の位置づけ
これまでの制度
- ケアマネジメントは全額保険給付
- 利用者自己負担なし
前回までの議論
- 他サービスとの公平性
- 財政規模の拡大
- 有料老人ホーム等での扱い
を巡り、繰り返し論点に
今回(資料2)での整理
- 利用者負担導入の是非を、改めて主要論点として明確化
- 結論は出ていないが
- 完全給付を続けるのか
- 一部自己負担を求めるのか
の選択を避けられない段階
👉 ケアマネにも直接影響する重要論点
5️⃣ 軽度者(要介護1・2)サービスの扱い
これまでの制度
- 要介護1・2も介護保険給付が基本
- 生活援助サービスも保険給付
前回までの議論
- 総合事業への移行案がたびたび浮上
- 利用者・現場から慎重意見が多数
今回(資料2)の位置づけ
- 給付の在り方を引き続き検討する論点として整理
- 一気に制度変更するのではなく
- 地域差
- 利用者影響
を踏まえて議論継続
👉 「すぐ変更」ではないが、安心できる状況でもない
6️⃣ 補足給付・高額介護サービス費
これまでの制度
- 低所得者を守るセーフティネット
- 所得・資産区分は比較的シンプル
今回の資料2での変化
- よりきめ細かな負担能力判定を検討
- 在宅との公平性、多床室の扱いなども再整理
🔚 まとめ(ブログ用結論)
資料2を通して見えてくる最大の変化は、
「介護保険は守られる制度」から
「負担を分かち合って続ける制度」へ移行しつつある
という点です。
今回の資料は、まだ結論を出す段階ではありません。
しかし
- 利用者負担
- 資産の扱い
- ケアマネジメント
といったこれまで踏み込まれにくかった部分が、
明確に議論の俎上に載ったことは大きな転換点です。
今後の制度改正は、
利用者・家族だけでなく、ケアマネや事業者の実務にも直結します。
引き続き、介護保険部会の動向を丁寧に追っていく必要があります。

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