介護保険最新情報 Vol.1515|特養の診療行為と報酬の給付調整をやさしく解説(令和8年6月版)

介護保険最新情報

はじめに結論からまとめます。

  • 配置医師の「健康管理・療養上の指導」は介護報酬で評価されるため、初診料・再診料などは原則算定できない。
  • 配置医師以外の医師(外部医師)は、緊急時や専門外の傷病など条件を満たせば、初診料・再診料・往診料など診療報酬を算定できる。
  • がん末期や在宅療養支援診療所等・協力医療機関による看取りでは、在宅患者訪問診療料や看取り加算などの診療報酬が算定できる。
  • 令和8年度診療報酬改定で、協力医療機関と介護保険施設等とのカンファレンス頻度の要件が見直され、リーフレットも一部改正された。
  • 協力医療機関の要件(急変時対応・診療体制・入院受入体制など)と、ICTを使った情報共有の有無でカンファレンス回数が変わる点が重要。

ここから、現場で迷いやすいポイントを順番に整理していきます。

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特養における診療行為と報酬の基本

特養の配置医師と外部医師の役割

  • 配置医師: 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、入所者の健康管理や療養上の指導を行うために、必要な数の医師を配置することが決められています。 この配置医師が行う健康管理や療養上の指導は、介護報酬(基本サービス費)に含まれていると考えます。
  • 外部医師(配置医師以外の医師): 協力医療機関の医師など、施設外の医師が関わる場合です。 緊急時や、配置医師の専門外の病気で特に診療が必要なときには、初診料・再診料・往診料などの診療報酬を算定できる場合があります。

介護報酬で評価される部分

  • 健康管理・療養上の指導 日常的なバイタルチェック、服薬管理、生活上の療養指導などは、介護報酬の基本サービス費で評価されています。
  • そのため、配置医師が行う初診料・再診料などは診療報酬としては算定できないとされています。

医療保険(診療報酬)で評価される部分

  • 配置医師以外の医師が行う診療
    • 緊急時の診察
    • 配置医師の専門外の傷病に対する診療 などの場合、初診料・再診料・往診料などの診療報酬が算定可能です。
  • 末期の悪性腫瘍や看取りの場合
    • 末期の悪性腫瘍
    • 在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院・協力医療機関の医師による看取り では、在宅患者訪問診療料・在宅ターミナルケア加算・看取り加算などが算定できます。

これらの基本的な考え方は、次の通知で示されています。

  • 「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」 (平成18年3月31日保医発0331002号 令和8年3月27日一部改正) <https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681750.pdf>

協力医療機関とカンファレンス要件(今回改正のポイント)

令和8年度診療報酬改定で何が変わったか

令和8年度診療報酬改定では、協力医療機関と介護保険施設等とのカンファレンスの頻度が見直されました(令和8年6月1日施行)。 これに合わせて、「特別養護老人ホームにおける診療行為に対する報酬の給付調整について」のリーフレットも一部改正されています(令和8年6月版)。

  • 改正の背景
    • 在宅医療の質を高めること
    • 介護保険施設内で対応しきれない医療に対して、協力医療機関と連携して適切に対応すること
    • 急変時の連絡体制や入院受入体制を明確にすること

参考:令和8年度診療報酬改定説明資料「8. 質の高い在宅医療の推進」 <https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686053.pdf>

協力医療機関の要件(令和6年度介護報酬改定)

協力医療機関は、次のような要件を満たす必要があります(複数の医療機関を組み合わせても可)。

  • ① 急変時の相談体制 入所者の病状が急変したときなどに、医師または看護職員が常時相談に応じられる体制があること。
  • ② 診療体制 特養から診療の依頼があったときに、診療を行う体制を常時確保していること。
  • ③ 入院受入体制 急変時に診察した結果、入院が必要と判断された場合に、原則として入院を受け入れる体制を確保していること。

これらは、介護保険施設と医療機関が「平時から連携している」ことを前提にした要件です。

カンファレンス頻度の見直し(往診・入院加算との関係)

リーフレットでは、往診や協力対象施設入所者入院加算を算定するためのカンファレンス要件が整理されています。

  • ICTを使って情報連携している場合
    • 入所者の診療情報や急変時の対応方針を、ICTで常に確認できる体制
    • 年1回以上のカンファレンスで情報共有
  • ICTを使っていない場合
    • 年3回以上のカンファレンスが原則
    • ただし、往診や入院の件数が一定以上ある場合は、年1回以上でもよいとされています。

この「カンファレンスの回数」が、緊急往診加算・介護保険施設等連携往診加算・協力対象施設入所者入院加算などの算定要件に関わってきます。

詳細は次の通知・資料で示されています。

  • 「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」 (令和8年3月27日 老老発0327第2号・保医発0327第4号) <https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697767.pdf>

具体的な場面別の報酬評価例

ここからは、リーフレットに示されている代表的な事例を、現場でイメージしやすい形で整理します。

1. 急変時に協力医療機関の医師が往診する例

場面のイメージ

  • 配置医師がいない時間帯に、特養入所者の体調が急に悪化。
  • 特養が協力医療機関に連絡し、医師が往診。
  • 診察の結果、入院はせず、経過観察となった。

このとき算定できる診療報酬の例

  • 初診料または再診料
  • 往診料(必要に応じて緊急・夜間・深夜加算など)
  • 介護保険施設等連携往診加算(要件を満たす場合)

※ 緊急往診加算などを算定するには、

  • 介護保険施設との情報共有体制
  • カンファレンスの実施頻度 など、先ほどの要件を満たしている必要があります。

2. 特養内で診療が完結する発熱・点滴の例

場面のイメージ

  • 入所者が発熱。
  • 配置医師が診察し、風邪症状と軽い脱水と判断。
  • 特養内で、注射用抗菌薬と電解質製剤の点滴を実施。

報酬の考え方

  • 健康管理・療養上の指導 → 介護報酬(基本サービス費)に含まれる。
  • 薬剤料・点滴注射 → 診療報酬として算定可能。
    • ただし、配置医師の診療日以外に、配置医師の指示で看護師が点滴を行った場合は、薬剤料のみ算定可能とされています。

3. 配置医師の処置後に外部皮膚科医が介入する例

場面のイメージ

  • 入所者が居室の扉に手を挟み、表皮剥離。
  • 配置医師が応急処置(洗浄・ガーゼ保護)を行い、経過観察。
  • 数日経っても治らないため、配置医師の指示で皮膚科を受診。

報酬の考え方

  • 配置医師による健康管理・療養上の指導 → 介護報酬(基本サービス費)に含まれる。
  • 皮膚科受診(配置医師の専門外)
    • 受診先の診療所で、初診料
    • 創傷処置などの処置料 → 診療報酬として算定可能。
  • 皮膚科医が往診した場合は、往診料も算定できます(交通費は入所者から実費徴収)。

4. 特養内で末期がんの入所者を看取る例

場面のイメージ

  • 入所者ががん末期と診断される。
  • 配置医師が定期的に健康管理を行い、最終的に特養内で看取り。
  • 死亡診断も特養内で実施。

算定できる診療報酬の例

  • 在宅患者訪問診療料
  • 在宅ターミナルケア加算
  • 看取り加算(条件を満たす場合)
  • 死亡日に往診して死亡診断を行った場合、死亡診断加算(ただし看取り加算を算定している場合は不可)

介護報酬との関係

  • 「看取り介護加算(Ⅱ)」を算定している場合は、看取り加算(診療報酬)は算定できないなど、両者の関係に注意が必要です。
  • 看取りを行う特養は、看取り介護加算の施設基準(24時間連絡体制、看取り指針、職員研修、個室等の配慮など)を満たしている必要があります。

給付調整でよく迷うポイント

初診料・再診料が算定できないケース

  • 配置医師が行う診療
    • 健康管理・療養上の指導は介護報酬で評価されているため、 配置医師による初診料・再診料・外来診療料は算定できないとされています。
  • 外部医師が関わる場合でも、配置医師と同じ扱いになるケース
    • 開設者や代表者が特養と同じ、または特別な関係にある場合など、 一部の加算(介護保険施設等連携往診加算・協力対象施設入所者入院加算など)が算定できない場合があります。

看取り加算と看取り介護加算の関係

  • 診療報酬側:看取り加算
    • 在宅患者訪問診療料を算定している患者で、死亡日に往診または訪問診療を行い、看取った場合に算定。
  • 介護報酬側:看取り介護加算(Ⅱ)
    • 特養の看取り体制に対する評価。
  • 両者の関係
    • 看取り介護加算(Ⅱ)を算定している場合、診療報酬の看取り加算は算定できないなど、二重評価にならないように調整されています。

往診時の交通費の扱い

  • 外部医師が往診した場合、
    • 往診料などの診療報酬は医療保険から
    • 往診にかかった交通費は入所者から実費徴収 という整理になっています。

関連通知・参考資料の整理

最後に、今回のリーフレットや給付調整の考え方に関係する主な通知・資料をまとめます。

  • 「特別養護老人ホームにおける診療行為に対する報酬の給付調整について」(令和8年6月版リーフレット)
    • 特養における医療行為の報酬評価を、事例でわかりやすく示した資料。
    • 配置医師・外部医師・協力医療機関・看取りなど、現場で迷いやすいポイントを整理。
  • 「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」一部改正(保医発0327第5号) <https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681750.pdf>
  • 「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」一部改正(老老発0327第2号・保医発0327第4号) <https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697767.pdf>
  • 令和8年度診療報酬改定説明資料「8. 質の高い在宅医療の推進」 <https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686053.pdf>

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